年間を通して楽しめる鰹ですが、今の時期は「初鰹」と呼ばれる旬にあたります。たたきや刺身から丼まで、私たちの食卓を彩ってくれる人気の高い魚ですね。そして日本の食文化になくてはならないあの発酵食品もこの魚から作られているんです。今回はその鰹の魅力をお伝えします。
鰹の主な産地は何県?
鰹は世界中の温暖な海域に生息しており、頭と尾の部分が細く腹の部分は太い紡錘形の回遊魚。背側は濃い藍色、腹側は銀色です。日本で獲れる魚の旬が大半が1回ですが、鰹の旬は年に2回あり、とても珍しい種類の魚といえます。
日本の太平洋沿岸に生息する鰹は、季節によって太平洋沿岸を回遊します。年間を通して食卓に並ぶ魚ですが、北上と南下のタイミングでその地域の漁港で水揚げされるため、旬は初夏と秋の2回とされています。鰹と言えば、たたきで有名な高知県のイメージがありますが、日本国内の水揚げ量トップ3は 静岡県が1位、次いで 宮城県、 東京都になっています。実は高知県は第5位で他の上位は三重県、宮崎県などになります。いずれにしても、太平洋沿岸で水揚げされていることがよくわかります。
初鰹と戻り鰹の違いは何?
鰹には旬が2回あるとお伝えしましたが、その一つがまさに今、4月から6月にかけて水揚げされる「初鰹」と呼ばれ江戸時代から重宝されていました。えさの小魚などを求めて北上の途中ですので、脂身が少なくさっぱりとした味が特徴です。魚肉も脂肪がつく前なので鮮やかな赤色をしており、締まっていて弾力のある食感が楽しめます。「目に青葉 山ホトトギス 初かつお」の句でもお馴染みですね。
そしてもう一つの旬が8月中旬から9月下旬に獲れる時期で、「戻り鰹」と呼ばれています。こちらは十分にえさを食べた状態で、その身は脂がタップリのっているのでトロッとした舌触りでやわらかく、濃厚な味を楽しめます。しっかりと脂がのっていてまるでトロのような味わいであることから、地方によっては別名「トロガツオ」や「脂ガツオ」などと呼ばれることもあります。
日本を代表する発酵食品も鰹から
鰹は単に食べるだけではなく、日本の食文化にはなくてはならい発酵食品の基としても貴重な存在とされています。そう皆さんもご存じ、世界でもっとも硬い発酵食品とされる鰹節なんです。鰹節の生産量は1年間で約30,000トンにものぼり、出汁を大切にする和食をしっかり支えているのです。
市場に出回っている鰹節には、主に2種類あり「荒節」と「本枯節(ほんかれぶし)」が流通しています。荒節はゆでたカツオを燻製にしたもの、本枯節は荒節にコウジカビを増殖・熟成乾燥させる作業を何度か繰り返して完成したものになります。
日本最古の歴史書とされる古事記に鰹節の原型とされる「堅魚(カタウオ)」の記述があります。堅魚は3世紀中頃、弥生〜古墳時代には作られているため、鰹は1800年以上もの間、日本の調味料の礎を担って来たといえるでしょう。鰹と日本人の密接な関係が伺えますね。
おいしい鰹の選び方
ではおいしい鰹の選び方を覚えておきましょう。切り身やサクで購入するときは、血合いが黒くなく、身が赤色で少し透き通って見えるものを選ぶようにしてください。断面が虹色に光っているものは少し鮮度が落ちているので避けるようにしましょう。皮目に脂がのったカツオは鮮度が落ちるのも早いので、できるだけ早く食べるように心掛けてください。鰹を丸ごと一匹買う場合には、魚体にツヤがあり、背中の黒色と銀色の縞模様がはっきりとしたものを選ぶのがオススメです。
パパキャリ風カツオ丼をお楽しみに
鰹のお話いかがでしたか。日本人の食文化を支えて来た貴重な魚の旬を、ぜひ家族みんなで楽しんで貰えればと思います。そこで次週に公開します「パパのお手軽レシピ」では、簡単に作れる「パパキャリ風カツオ丼」をご紹介します。鰹をタレ汁に漬けてからご飯にのせるだけのシンプルレシピですが、絶品ですよ。ご期待くださいね。
【参考文献】
※『ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典』|株式会社三賢社2022年刊
※『旬を味わう魚の事典』| 株式会社ナツメ社2008年刊