食欲の秋を迎えました。多種多様な食材が食卓を彩ってくれ、お家のご飯も盛り上がることでしょう。この時期に訪れる旧暦の9月9日(今の暦では10月中旬頃)は重陽の節句として、食べ物に感謝してこれからの季節に備える大切な日とされて来ました。自分の舌で感じ取る本来の味覚は、他の感覚同様に自身の健康と命を守るものといえます。そこで家族みんなの健康のためにこの時期に食べておきたい食材とその意味についてご紹介します。
重陽の節句とは
今のカレンダーの9月9日は、まだまだ秋とは呼べない厳しい暑さが続きますが、旧暦の9月9日(重陽の節句)は今の10月中旬頃にあたり、まさに秋本番を迎える頃です。長月と呼ばれる10月は別名、菊月とされ菊の花が旬真っ盛りになります。中国では菊は長寿に効くとされ、9月9日には菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わし無病息災を祈願していました。その風習が奈良時代に日本に伝わり、平安の頃には体の不調に効く薬として重宝されるようになりました。
そして江戸時代には幕府が9月9日を重陽の節句と正式に定め、武家から庶民まで、秋の実りに感謝をするともに自身の健康を守る食材を食べて、体を整え元気になって心も整えることに注力するようになったのです。秋の食養生、それが重陽の節句の大切な目的だったのです。
この秋に食べておきたい食材「松茸」
ではこの時期に家族の健康のために食べておきたい食材とは何になるのでしょうか?難しく考える必要はありません。昔からいわれているその時期の旬のモノをバランス良く食べれば大丈夫なんです。秋は多種多様な食材が旬を迎えます。魚でも肉でも、そして野菜から果物まで、偏りなく摂っていくようにしてください。
例えば「松茸ごはん」、秋の味覚の王様とされる松茸を炊き込みご飯にして、年に1回、ハレの日の食事として家族みんなで楽しめば心も和むことでしょう。まさに心を整えてくれる逸品ですね。
この秋に食べておきたい食材「さんま」・「鴨肉」
秋の魚といえば何と言っても「さんま」です。必須アミノ酸をバランスよく含んだ良質のタンパク質を持ち、貧血防止に効果のある 鉄分、粘膜を丈夫にするビタミンA、また骨や歯の健康に欠かせないカルシウムとその吸収を助けるビタミンDも多く含んでいます。注目の成分DHAには、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす効果もあり、育ち盛りのお子さんからパパ・ママまで効果的な万能の食材なんです。旬の酢橘をたっぷり絞って楽しみましょう。
肉類の中でこの時期に食べて欲しいのは「鴨肉」です。農耕民族である私たち日本人の腸は穀物の消化には適していますが、消化されにくい肉類は腸の中に残って腐敗しやすく不調の原因になる可能性もあります。その点、 鴨肉は他の肉類に比べ消化されやすくもたれず、日本人に最適な肉なんです。
鴨肉には、ビタミンB1とB2、そして鉄分が他の肉類より豊富に含まれています。加えて脂肪分が体に良い効果をもたらす不飽和脂肪酸なので、血液をサラサラに保ち、動脈硬化や高血圧の方にもオススメの食材となります。もちろん血液がサラサラになると血行が良くなり、肌の隅々にまで栄養分を行き渡らせてくれるので、ママの美容と健康にも相応しい食材ですよ。
果物「柿」や「栗」もしっかり食べましょう
秋の果物の代表格のひとつ「柿」にはカロテノイドやビタミンC、食物繊維、カリウム、タンニンなど多くの栄養素が含まれています。カロテノイドはその抗酸化作用でガン予防や動脈硬化予防に役立ちます。ビタミンCも同様に抗酸化作用があり老化防止、感染予防、美肌効果があります。食物繊維はお通じの心強い味方になってくれます。まさにママに積極的に食べで欲しいフルーツですね。
そしてカリウムは利尿作用で血圧を下げる効果がありますし、タンニンは胃粘膜に働いてアルコールの刺激作用を防ぎ、その吸収を抑制しつつ酒の酔いもさましてくれます。二日酔い対策にも有効とされていますので、パパにも役立つ効果満載です。
続いては「栗」、こちらは食物繊維やビタミンB1が豊富です。食物繊維は腸内でプレバイオティクスとして利用され、腸内環境を整える手助けをしています。そのほか便秘を対策したり、血糖値の急激な上昇を抑えたりなど、さまざまな効能を持っています。ビタミンB1は糖質の代謝を促し、エネルギーを作る助けをしてくれます。脳は糖を主な栄養源としているため、その正常なはたらきにも関与する成分になります。また、皮膚や粘膜を丈夫にする効能もあるので家族の健康に大切な栄養といえます。ぜひ、みんなで積極的に食べてくださいね。
秋の味覚を家族皆で楽しみましょう
食欲の秋の時期は、作物の実りに感謝をするともに自身の健康を守る食材を食べて、体を整え元気になって心も整えることが大切であるというお話、いかがでしたか。ぜひ家族みんなで旬の食材をバランスよく摂って元気に過ごしてくださいね。
【参考文献】
※『日本人が大切にしたいうつくしい暮らし』|株式会社かんき出版2012年刊
※『くらしに役立つ栄養学』|ナツメ社2021年刊