「みんな大好きアイスクリーム♫その歴史に迫る(前篇)」~子どもと一緒に食を考える #86

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

今年も暑い夏がやって来ましたが、誰をも惹きつけてやまない甘い氷菓、そうアイスクリームの季節到来でもあります。イタリアではジェラート、フランスではグラース、ロシアではマロージュナエと呼ばれ、世界中で愛されているスイーツです。今回から2回に渡って、アイスクリームの歴史を紐解いてみましょう。まず前篇ではアイスクリームの発祥について迫ります。

氷菓の始まりはアレキサンダー大王?

古代マケドアニの王としてマケドニアからエジプト、ギリシャ、ペルシャからインドの一部に広がる広大な帝国を築いたアレクサンドロス3世(アレキサンダー大王)は、山から雪を運ばせ、冷たい飲み物を作り、戦場で兵士たちに与えて士気を高めたと言われています(BC330年頃)。またローマ帝国の皇帝ネロは、アルプスから雪を運ばせ、バラやスミレの花水や蜂蜜などで香味をつけた「ドルチェ・ビータ」なる氷菓を好んでいたとの逸話が残されています(AC60年頃)。

いずれにしても、2000年以上まえから人類は冷たい氷というものに憧れ、当時の権力者たちは挙って愛飲していたのが氷菓の始まりとする説が有力です。

アラブの「シャルバート」が今日の氷菓の原点に

では今日の氷菓・アイスクリームと直接結びつくと考えられているのが、11世紀頃にアラブの世界にあった「シャルバート」という冷たい飲み物になるのです。これはバラや麝香(じゃこう)で香味をつけた砂糖水を山の氷雪で冷やしたもので、11世紀末~13世紀に行われた十字軍の遠征によってアラブからシチリア(イタリア)に伝わりました。シチリアでは長年に渡り製法に様々な工夫がなされ、名前も「ソルベット」となり現在のシャーベットの原型となったのです。

ミルクとの出会いによりアイスクリームへ

16世紀に入ると、シリリアで成熟した「ソルベット」はフランスをはじめヨーロッパ各国へと拡がっていきました。その過程で、ソルベットの材料に牛乳や生クリームを用いられるように、アイスクリームの誕生へと繋がっていったのです。そして同時期に、水に硝石を加えると、その溶解の吸熱作用で水の温度が下がることが発見され、冷凍技術が確立されたのも、アイスクリームの誕生には欠かせない出来事でした。

イギリスからアメリカへ渡ったアイスクリーム

ほどなくアイスクリームは海峡を越えてイギリスにも伝わりました。ただフランスやイタリアと同じように貴族などの一部の上流階級が味わうことの出来るまだまだ高価なものでした。やがて新天地アメリカにもアイスクリームは渡り、そこで大きな飛躍を遂げることになるのです。

新世界アメリカに伝った頃は、ヨーロッパ同様に高価なもので庶民には縁のない状況でした。それが1800年代に入るとアイスクリームのレシピが料理本として数多く紹介されるように、一般家庭でも作られるようになってきました。加えて、アイスクリームを販売する菓子職人も増え、1870年代には企業によるアイスクリームの大量生産も始まり、一気に大衆の間に広まり不動の人気を誇るようになりました。

ブランドアイスの誕生が新たな世界を築く

順調に成長してきたアイスクリームは第二次世界大戦後の混乱期には低迷する時期はありましたが、それを乗り越え1960年代にはあらたな発展期を迎えることになります。ハーゲンダッツに代表されるブランドアイスが登場し、大衆化したアイスクリームの中で、ひと味違う高級路線が人気を集めるようになりました。日本は勿論、世界60ヶ国以上で販売されるトップブランドに刺激を受けた各メーカーは独自の味、製法に磨きをかけ、今日の隆盛を迎えるに至ったのです。

今回の前篇ではアイスクリームの誕生から今日までを辿ってきました。次回の後篇では日本におけるアイスクリームの歴史を紐解きます。お楽しみに♫

【参考文献】
※『アイスクリームの歴史物語』|株式会社原書房2012年刊
※『お菓子の由来物語』|株式会社幻冬舎ルネッサンス2008年刊

-HOT, 食・レシピ
-, , , ,