土用の丑といえば鰻ですが、夏場のアナゴもさっぱりとした味わいで高い人気があります。加えてこの時期だけでなくお寿司屋さんなどでは年中楽しめるので、いったい旬はいつなのか?と首を捻る人も意外と多いようです。そこで今回は、アナゴの旬を探るとともに、みなさんが一度は疑問を持ったであろう鰻との違いにも迫ります。
アナゴの旬は夏か冬のどちら?
アナゴは北は東北、南は九州と、日本全国各地に生息しており、長崎県を筆頭に、島根県、宮城県などが主な漁獲地になっています。名前の由来は、日中は砂泥地の岩穴などに潜んでいることから「穴ごもり」からきているとする説が有力です。また地域によっては、「デンスケ」、「ハム」、「キンリョウメ」などの呼び名もあり、古くから各地で親しまれている魚です。
そのアナゴの旬は6~8月の夏場と言われていて、この時期は脂が少なくさっぱりとした味わいが楽しめます。しかし、冬場の11~12月のアナゴの方がおいしいと言う人も少なくなく、好みが分かれる食材のようです。冬になるとエサが豊富になりアナゴに脂が乗るので、この時期を旬とする見方もあるようです。 一般的には魚はもっとも脂が乗っている時期を旬とすることが多いようですが、アナゴは淡白な味わいが好まれる魚なので、さっぱりと食べられる夏場を旬と謳うのが基本になっているのです。
アナゴと鰻の違いは?
鰻との違いを問われたら、見た目や味の違いはなんとなく分かっても、具体的に何が違うのかよく分かっていない方も多いのではないでしょうか。それぞれの特長をまとめてみましたので比べてみてください。
◯アナゴの特長
◆ウナギ目アナゴ科
◆一生を海で過ごす
◆見た目は薄茶色で側面に白い斑点があり、背びれの下にも白い点が一列に並んでいる
◆上あごが出ている
◆尾びれが尖っている
◆低カロリーで淡白
◆夏場が旬
◯ウナギの特長
◆ウナギ目ウナギ科
◆海で産卵し、孵化したあとは河川などの淡水で成長する
◆見た目は黒に近い灰色
◆下あごが出ている
◆尾びれが丸みがある
◆アナゴに比べて高カロリー(脂質の量はアナゴの約2倍)
◆冬場が旬
このように似ている点はあるものの、実際に比べてみると姿かたちだけでなく、生態から味まで大きな違いがあるのです。そして土用の丑の日に食べることが多い鰻ですが、その旬は冬場になります。 鰻は脂質が多いため、焼いているときに脂がしたたり落ちているイメージがありますし、そうして余分な味を取り除き、蒲焼きや鰻丼にしていただくことに適しています。
一方、アナゴは脂質が少なく淡白な味のため、天ぷらやふっくらとタレで炊いてお寿司などにして食べることに適しています。逆にアナゴを蒲焼きにしても鰻のような濃厚でジューシーな味はなかなか出ませんし、鰻を天ぷらにすると脂が多すぎるため、天ネタとしては不向きな食材になります。
アナゴのおいしさと豊富な栄養
ではアナゴをおいしく楽しめる代表的な料理をご紹介しましょう。まずは「のれそれ」です。アナゴの幼魚で5cmくらいの大きさのもので、ポン酢などでいただきます。透き通ったきれいな体で「水の妖精」とも呼ばれており、淡白な味の中にも、ほのかな甘みが感じられ食通を喜ばせる食材として高い人気があります。
アナゴの白焼き
シンプルに焼いただけのアナゴですが、おいしさは間違いなく一級品です。 下処理でぬめりをしっかり取れば、あとはフライパンで焼くだけで完成。塩とワサビでいただくアナゴの白焼き、お酒の肴にもベストマリアージュします。
煮穴子
アナゴと言ったらやはり煮穴子ですね。下処理としてアナゴに熱湯をかけ、冷水につけることによってしっかりぬめりを取ることがポイント。ぬめりが取れば、お好みの味付けで煮るだけです。アナゴのふっくらした身と甘いタレが絶妙なおいしさを生み出してくれます。そのまま食べてもよし、丼にしてもよし、でも、一番人気はやはりお寿司になるでしょう。
アナゴの天麩羅
先述のように鰻は天麩羅には不向きですが、淡白な味のアナゴには抜群の相性の調理法になります。下処理は「骨切り」をするだけでよく、サッと揚げればおいしいアナゴの天麩羅が出来上がります。ふわっふわっの食感を楽しむには、塩だけでいただくのがおすすめです。
ビタミンAやたんぱく質が豊富
このような調理法でおいしく楽しめるアナゴは、ヘルシーだけでなく、その栄養価も高く、なかでも活性酸素を抑えて動脈硬化や心筋梗塞の予防や免疫力を高めてくれるビタミンAをはじめ、血液や皮膚、筋肉、内臓を構成するのに必要なたんぱく質などを豊富に含んでいる食材です。家族の健康にも役立つアナゴと覚えておきましょう。
季節ごとのアナゴをおいしく楽しみましょう
夏場が旬とされるアナゴですが、冬の方が脂が乗ってておいしいとも言われますし、季節によってアナゴの味の違いを楽しんでみるのもいいかもしれません。スーパーや魚屋さんでアナゴを見つけたら、ぜひお家で淡白な味を活かしたアナゴ料理を家族みんなで楽しんでくださいね。
【参考文献】
※『旬の野菜と魚の栄養時点』| 株式会社エクスナレッジ2011年刊