『みんな大好きおいしいマグロ♫その歴史を徹底解剖(後篇)』~子どもと一緒に食を考える #26

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『みんな大好きおいしいマグロ♫その歴史を徹底解剖(後篇)』~子どもと一緒に食を考える #26

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

日本人とマグロの歴史に迫るお話の後篇は、マグロを巡る現在の状況と、これからの展望を中心にお届けします。世界的に日本食がブームとなり、その代表的な食材の1つでもあるマグロにも注目が集まりました。これまで日本人が消費の主流を占めていたマグロが世界中から求められ、乱獲も加わったため資源が枯渇する問題がクローズアップされたりしています。そんな中、マグロの未来を拓く取り組みが花開き注目を集めているのです。

欧米や中国で急増したマグロの需要

日本食ならではの「魚の生食」文化を代表する食材であるマグロの消費量は、1990年頃までは当然、日本が主流を占めていました。ところが1990年代後半から世界的な需要が増加し、私たちのマグロ消費を脅かすようになったのです。特に顕著なのが中国と欧米でのマグロ人気の沸騰が挙げられます。中国では、これまで輸出用としてしか捕獲してこなかったマグロを自国で消費しようとする動きが活発になり、マグロのおいしさに目覚めた中国の人たちが、その需要を膨大な数に押し上げました。

さらに、魚を生で食べる文化を奇異に感じていた欧米の人たちまで、健康食ブームや牛肉のBSE問題に代表される肉食への不安から、刺身や寿司などの日本食を取り入れるようになりました。その結果、和食の食材の代表格であるマグロの消費が一気に高まり、世界的なマグロブームを呼び、日本での需要と供給に大きな影響を及ぼすようになってきたのです。

絶滅危惧種に指定されかけたクロマグロ

世界的なマグロブームの中で、日本を揺るがす事件が起こりました。マグロの数ある種類の中で、本マグロとも呼ばれ、マグロの中のマグロとして一番の人気を誇るクロマグロが乱獲などにより、国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種に指定されかけたのです。マグロの仲間で最もおいしいとされているクロマグロの捕獲が禁止されれば、日本の食文化に大きな影響を与えてしまいます。幸い、その指定は免れたものの、捕獲量の制限などの厳しい条件の中でクロマグロは、希少な高級食材となってしまったのです。

日本人に愛されるクロマグロの魅力

東京の豊洲市場のマグロ初競りで、毎年、青森・大間のマグロが最高値で競り落とされるのは有名ですが、もちろんこれもクロマグロです。上質な脂がのった「トロ」は最高級の寿司ネタになり、赤身もマグロ類の中では最も味が濃くおいしいと高い人気があります。世界各地で漁獲されるクロマグロの大半は、刺身や寿司用となり、その多くが日本で消費されるのです。そして、おいしさを知り尽くしている私たち日本人は、余すところなくクロマグロを楽しんでいるのです。

中骨肉は「中落ち」として、わさび醤油で味わったり、丼の具材としても重宝されます。かまや皮は塩焼きにして、筋や血合肉などの部位は角煮やねぎま鍋で、内臓はあら煮にし、眼球はホイル焼き、といったようにすべての部位をおいしく食べる術を持っているのです。これこそ、世界に誇る和食の真髄ともいえるでしょう。

ただ先に述べたように、世界的なマグロブームの中で、貴重なクロマグロの供給量と私たち日本人の需要とのバランスが崩れている点が、これからの大きな課題となっています。

クロマグロの未来に光明を点した近大の取り組み

今や貴重な水産資源となっているクロマグロの将来に光明を点す取り組みを続けてきたのが、近畿大学水産研究所です。1970年にクロマグロの完全養殖に向けての研究が始まりました。実に32年もの歳月を要し、ついに2002年6月に完全養殖に成功し、その2年後2004年に市場に初出荷を果たしたのです。クロマグロは非常にデリケートな魚のため、当時は生態もよく知られていませんでした。そのため、期初はクロマグロの徹底した観察からのスタートでした。

そして研究の過程で人工ふ化した稚魚が突然死する原因などの解明が進むと、適切な飼育環境を整えるためのさまざまな対策が講じられ、ついに成魚に育て上げた個体からの産卵までこぎつけて、完全養殖の実現となったのです。「近大マグロ」とマスコミでも大きく取り上げられ、出荷量も安定してくる中、クロマグロの完全養殖は日本の食文化を後世に伝えていくための大きな力になると期待されています。

子どもにもしっかり伝えたいマグロの魅力と大切さ

2020年代を迎えた今日、大手寿司チェーンのCMなどでも「大トロ」「マグロ三昧」などのPRを数多く目にします。大人も子どもも大好きなマグロは、私たちの「魚の生食」文化を象徴する食材であることをしっかりと認識し、パパ・ママはぜひ子どもにその事を伝えてあげてくださいね。単においしいだけでなく、マグロと日本人の関わりの深さから、大切な水産資源であることなどを教えてあげましょう。そうすれば、もっともっと、おししくマグロを楽しめるようになりますよ。

【参考文献】

※ 『食材魚貝大百科~マグロのすべて』| 株式会社平凡社2007年刊

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