「河豚はホントに危険な魚なの?」~子どもと一緒に食を考える #74

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「河豚はホントに危険な魚なの?」~子どもと一緒に食を考える #74

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

普通の魚の形から、突如ぷくっと膨らむ姿が特徴的な魚「河豚」。透き通るような白い身は淡白な印象ながら、豊かな味わいを持っており、「河豚ちり」は冬場の鍋を代表する逸品となっています。ただ河豚は猛毒を持っており、昔からその毒に当たって亡くなる人が多かったのも事実です。今回は、旨さと危なさを併せ持つ高級魚に迫ります。

河豚が持つ毒は「テトロドトキシン]

河豚は世界で約120種類ほど存在しており、日本海近海には約50種類ほど生息しています。日本でお馴染みの「トラフグ」や「マフグ」はフグ科に属し、「ハリセンボン」や「イシガキフグ」などフグ科に属さない種類もいるのです。丸く膨らむ姿がかわいらしい魚ですが、実は猛毒を持っているので調理や食べるときには注意が必要なんです。

その毒は「テトロドトキシン」と呼ばれ、河豚の血液や内臓、皮膚、筋肉に含まれています。以前は、河豚の体内で作られると考えられていましたが、最近の研究では、同じ種類でも生息地や個体によって毒の強弱に差があることから、餌として食べた海洋細菌が体に蓄積して毒ができるものと考えられています。

「てっちり」の由来は毒に当たる!から?

全国的には「河豚ちり」や「河豚鍋」と呼ばれますが、河豚の消費量が多い大阪・関西ではなんと言っても「てっちり」という名がポピュラーです。河豚自体は縄文時代から食べられていたようで、徳川幕府の時代は武家に高い人気がある食材でした。ただ毒の除去の知識が乏しかったので多くの武士が無くなったことから江戸では河豚の食用は禁止されていました。

一方、庶民が多かった当時の大坂では河豚の人気は衰えず密かに楽しまれていたのです。ただ大きな声で河豚を食べようとは口に出来なかったので、猛烈な毒に当たると死んでしまうという意味から「鉄砲(てっぽう)」という隠語が生まれました。そして昆布だしや熱湯で煮ながらポン酢や醤油に薬味を加えて食べる鍋のことを「ちり」と呼ばれていたことから、「鉄砲のチリ」で「てっちり」になったといわれています。

毒の除去は免許を取得した人のみ可能

テトロドトキシンは青酸カリの約1000倍以上の毒性があり、300度の加熱でも分解しないので、煮たり焼いたりの調理では消滅しません。有毒の部分を食べてしまうとると20分~3時間で痺れや嘔吐などの中毒症状を起こし、毒性が強ければ命を失ってしまいます。また河豚の毒に有効な解毒剤もないのです。

そのため、正式な免許を取得した人のみに河豚を捌くことが認められており、その人が的確に卵巣や肝臓などの有毒部位を除去し清水で洗った後、食品として私たちに提供されるのです。ですから猛毒を持っている河豚も、私たちの口に入る時には、安全でおいしい魚になっているので安心して「てっちり」が楽しめるのです。

河豚の旬は冬?

正式な免許を持った人に捌かれた河豚は安心でおいしい魚であることは分かりましたが、その旬はいつになるのでしょうか。それはまさに今!産卵のため日本近海に集まる11月から2月が天然モノの最盛期になります。ただ人気の高いトラフグは漁獲量が少なく超高値の高級魚になります。気軽に天然モノを楽しむなら、「マフグ」や「コモンフグ」などがオススメです。

またトラフグの養殖モノは年間を通して出荷されているので、トラフグを楽しみたいという方には養殖モノを選ぶと比較的安価で手に入るのでお店でチェックしてみてください。

この冬、家族で河豚を楽しみましょう

猛毒を持っている河豚ですが、免許を持った人が捌くことで私たちも安心して食べることができるというお話、いかがでしたか。河豚ちりの魅力は、その身のおいしさもさることながら締めで味わう雑炊がなんと言って魅力です。ぜひ旬の今、家族で河豚ちりを囲み、おいしい雑炊を楽しんでくださいね。

【参考文献】

※『ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典』|株式会社三賢社2022年刊

※『旬を味わう魚の事典』|株式会社ナツメ社2008年刊

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