「貴重な水産資源・鰯の魅力に迫る」~子どもと一緒に食を考える #88

  1. HOME >
  2. HOT >

「貴重な水産資源・鰯の魅力に迫る」~子どもと一緒に食を考える #88

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

魚片に弱いと書いて鰯(いわし)、なんだか残念な文字に思えますが、どうしてどうして鰯は私たちの生活の中で貴重な水産資源になっているのです。ほぼ一年を通して食べられる食材で豊富な栄養素がありますし、飼料などの面からも重宝されているのです。今回はそんな鰯の魅力に迫ります。

鰯の主な種類は3つ

ニシン目ニシン科に属する鰯は、主には真鰯(マイワシ)、ウルメイワシ、カタクチイワシの3つに分かれますが、一般には鰯と言えば真鰯をさしています。古くから親しまれている干物の「目指(めざし)」は、真鰯の目に藁や竹串を通して数尾をまとめて乾燥させたものなんです。

分布は日本各地の沿岸から朝鮮半島近海となり、春には群れをなして北進し、秋には再び南下して来ます。季節で日本列島を回遊するので、北海道から千葉県の太平洋沿岸、大阪湾近郊、石川県や鳥取県などの日本海沿岸と全国各地で季節ごとに水揚げされ、年間を通して味わうことが出来る貴重な水産資源になっています。

生でも楽しめるようになった鰯

古くから馴染のある鰯ですが、水揚げ後は身持ちの時間が短く傷みが早いため、焼いたり煮たりする加熱調理や先述の目指をはじめとする加工品で食されることが主流でした。それが2000年代以降、荷造りの少量化や、氷の形状・水氷の塩分濃度などの改良が進み、漁獲した翌々日でも生食が可能となり、刺身や寿司ネタで楽しまれるようになりました。以前は、高級寿司店ではお目にかからなかった鰯が、今や立派なネタとして鎮座しているのも鰯の価値が上がった証といえるでしょう。

鰯の豊富な栄養素

寿司ネタにもなり価値が上がったとされる鰯ですが、私たちの健康面から見てみると、さらに価値が高い貴重な食材ということが分かります。まずビタミンを豊富に含んでいること、ビタミンA、B、D、Eとなんと4種類もあります。さらにカルシウムなどのミネラルもたっぷり含んでいます。

極めつけは、血中のコレステロールを低下させ、心筋梗塞・脳梗塞などの成人病の予防に効果があるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサペンタエン酸)もしっかりと含んでいるのです。魚に弱いなんてとんでもない、私たちの健康にとって、とてもとても強い味方になってくれる素晴らしい魚なんですよ。

子どもの成長にも欠かせないシラス

シラスと呼ばれる鰯の稚魚も成魚に負けず劣らずの素晴らしい健康食品なんです。特にカルシウムの含有量が高く、その他にもビタミンDやビタミンB12、たんぱく質、EPA・DHAなども豊富です。カルシウムは人の骨や歯の形成に必要不可欠な成分で、成長期の子どもにはしっかり摂取することが求められます。成魚の鰯と違ってシラスは柔らかく小骨なども気にならないので、小さな子どもでも食べ易い食材になります。パパ・ママは積極的にお子さんの食卓にシラスを使うよう心掛けてくださいね。

風習にも活躍している鰯

「鰯の頭も信心から」という諺のように、鰯は食材だけでなく私たちの風習でも古くから活躍しているのです。2月の節分の時に、家の玄関や軒に鰯の頭をヒイラギの木の枝に刺したモノを吊るしている風景が見られます。これは、ヒイラギのトゲのある葉が邪気を刺し、鰯の頭の臭気を邪気が厭うので、その侵入を防ぎ、家中の無病息災を願う風習で、平安時代から続いているといわれます。

このように鰯は私たちにとって貴重な食材だけでなく、風習でも活躍してくれる無くてはならい魚なんです。ぜひパパ・ママはお子さんに鰯の素晴らしさを伝え、そしておいしく楽しんで、家族の健康につなげて欲しいと願います。

【参考文献】
※『四季のさかな 話題事典』|株式会社東京堂出版2009年刊
※『日本の高級魚事典』|株式会社三賢社2022年刊

 

-HOT, 食・レシピ
-, , ,