『納豆の旬は今!その歴史と驚愕の食べ方をご紹介』~子どもと一緒に食を考える #31

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『納豆の旬は今!その歴史と驚愕の食べ方をご紹介』~子どもと一緒に食を考える #31

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

年中手に入るためつい忘れてしまいがちになりますが、加工品である納豆にも実は旬があるんです。納豆の旬はまさに今、そう真冬の1〜2月になります。11〜12月に収穫された大豆を貯蔵して年を越すと、新豆ならではのふっくらとした感じはそのままに程よく水分が抜け、豆の旨みが凝縮されます。その大豆で作られた納豆は、豆そのものの甘みが感じられる逸品で納豆好きを虜にしています。そこで今回は、納豆の歴史から、聞いてびっくりの食べ方まで納豆の面白話をご紹介します。

納豆の歴史は室町時代の上流社会から

現在の納豆の代表格「糸引き納豆」の歴史は室町時代頃からとされる説が有力です。当時の料理書のひとつである「大草家料理書」(年代不明)に糸引き納豆を使った「納豆汁」のつくり方が記されています。この時代、納豆は朝廷や貴族を中心とした限られた地位の人々の食べ物で庶民の食卓とは無縁だったようです。

その後、精進料理の中でも重要な食べ物として位置づけられていきましたが、やはり武家や仏教界を含めて上流社会で消費されるもので、ご飯のおかずとしての普及にはまだまだ時間が必要でした。

やがて江戸時代に入る頃から、納豆の生産も盛んになり広く市井の人たちの口にも入るようになってきました。江戸時代後期の風俗事典「守貞謾稿」(1837年)にも次のような記載があります。「大豆を煮て室に一夜してこれを売る。昔は冬のみ、近年夏もこれを売り巡る。汁に煮、あるひは醤油をかけてこれを食す…」。

かつては冬の食べ物であった納豆が夏にも売られるようになり、醤油をかけるという食べ方が登場したとあります。今日の納豆の代表的な食べ方が、江戸時代後期から始まったことがわかる貴重な文献とされています。

糸引き納豆がブレイクした訳は?

糸引き納豆は箸で混ぜれば混ぜるほどネバネバと糸を引いていくことから名付けられていますが、このネバネバを生み出すのが納豆菌と呼ばれる発酵微生物です。枯れた稲わらなどに多く存在すると言われている枯草菌の一種で、空気中や土壌の中など、自然界にどこにでも存在する細菌です。糸引き納豆は蒸した大豆を藁に包んでいるうちにできあがったと言われています。

現在では、稲わらで作るところは少なく、多くのメーカーでは培養した納豆菌を大豆に添加して大量生産されています。そしてこの糸引き納豆の特徴が、日本人の主食であるご飯とベストマッチし一気に食卓に欠かせない食べ物としてブレイクしていったのです。

パン食が中心の欧米人は主食の麦を粉にしてから焼いて食べる「粉食型」ですが、私たち日本人は主食の米をそのまま粒の形で炊いて食べる「粒食型」になります。同じ粒食型食品の納豆をご飯と一緒に食べるのは食感的にもマッチしたのです。さらに納豆のヌルヌルが喉の滑りを良くするので、ご飯に納豆をのせるとほとんどの人がかき込むように食べてしまいます。

「早飯食い」と称される日本人らしい光景ですが、糸引き納豆は消化吸収が良いので、よく噛まないかき込みでも胃腸への負担が少ないと言われます。なぜなら納豆にはたんぱく質やでんぷんを分解する消化酵素が豊富に含まれているからなのです。では、その素晴らしい栄養価についてご紹介しましょう。

糸引き納豆の素晴らしい栄養価

まず糸引き納豆最大の栄養価はたんぱく質の含有量にあります。素材である大豆よりも多く、100g中に占める比率は牛肉と比べても遜色ないほどです。そしてビタミンの補給源としても優れており、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシンなどを豊富に含んでいます。また、カルシウム、カリウム、亜鉛といった重要なミネラル類もたっぷりで、日本人にとってかけがえのない栄養源になっているのです。

加えて納豆ならではの成分のナットウキナーゼは血液をサラサラにし血栓の予防に役立つと大きな話題を集めていますし、血圧の上昇を抑える酵素も含んでいます。手軽に食べれる健康食品としてパパ・ママ、そしてお子さんもぜひ食べて欲しい貴重な食材なんです。

納豆に砂糖を入れる驚愕の食べ方、その秘密は?

江戸時代後期から始まった納豆に醤油をかける食べ方と真逆のスタイルが日本各地に存在しているのをご存知でしょうか。砂糖を入れてかき混ぜるという驚愕のレシピです。新潟、北海道、山形、秋田、宮城と東日本を中心に今も実践されています。

北海道、東北は日本の甘味処と称されるほど甘い食べ物が好まれる地域ですが、いくらなんでも納豆にも甘さを求めるのか?と疑問に思うところです。その訳は、寒冷地という点がポイントです。発酵食品である納豆はある程度の気温がないと一次発酵が進まない場合があります。納豆の大量生産が始まる前は、自家製の納豆作りが主流でした。寒さが厳しい地域では、完成した納豆のネバネバ、糸の引き具合が足りないことが少なくありませんでした。

苦労した地元の人たちは、試行錯誤の末、納豆に砂糖を入れてかき混ぜるとネバネバ感が一気に増加するという手法に辿り着いたのです。試しに、お家で、いつもの納豆に砂糖を少しだけ加えて混ぜてみてください。糸の引き具合の凄さが実感していただけることでしょう。

そしてお家で食べる市販の糸の引き納豆のタレにも注目してみてください。タレの成分表には、しっかりと砂糖が表記されているのです。寒冷地での試行錯誤で生まれた砂糖を入れるという食べ方を、実は知らず知らずに私たち日本人の大半が実践していたとは驚きですね。

家族みんなで納豆を食べましょう

今が旬の納豆のお話いかがでしたか。素晴らしい栄養価に加え、地域で育まれた食文化が今日のおいしさに繋がっているのを知ると、あらためて日本の食の豊かさに感動を覚えませんか。ぜひお子さんにも納豆の魅力ある話を伝えるとともに、おいしい納豆をたくさん食べてくださいね。

【参考文献】

※『納豆の食文化誌』| 一般社団法人 農山漁村文化協会2021年刊

※『納豆に砂糖を入れますか?』| 株式会社新潮社2013年刊

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