4月4日は沖縄県が誕生した日になります。1879年(明治12年)、この日に「琉球藩ヲ廃シ沖縄縣ヲ置ク」(布告第14号)が全国に発表され、琉球藩が廃止となり、沖縄県が設置されました。以来、地元では4月4日を「沖縄県誕生の日」という記念日として親しまれています。そこで今回は、最近は私たちの身近でも接する機会が増えた沖縄料理について掘り下げてみます。
沖縄ならではの環境が育んだ食材
沖縄の料理が全国の料理とくらべ少し異質と思われる点は、地元ならではの独特の食材が使われることにあります。沖縄では本土との気候の違いもあり、熱帯や温帯地域の野菜などが多く栽培されています。野菜でいえばゴーヤー、冬瓜、オクラ、らっきょうなどが特産品となっており、果物でいうと、シークヮーサー、パイナップル、マンゴー、バナナ、ドラゴンフルーツなど熱帯地域などでしか作られない果物の生産も全国1位を誇っています。
また、周りを海に囲まれていることもあり、海藻類が多く食べられてきたり、暖かい地域にしか生息しない、グルクン(タカサゴ)、イラブチャー(ブダイ)、アバサー(ハリセンボン)などの魚が使われるのも特徴のひとつになっています。加えて、それぞれの食材や料理名にも方言が使われ、チャンプルーやイリチーなどと、現在でも変わりなく呼ばれている点も沖縄料理の大きな特徴のひとつといえるでしょう。
豚肉が欠かせない沖縄料理
地元で採れる野菜や魚はもちろん料理によく使われますが、なんといっても沖縄の料理に欠かせない食材と言えば豚肉です。「鳴き声以外は全て食べる」と表現されるように、ラフテー、ティビチ、ミミガー、ナカミ、ソーキそば、と豚の頭の先からつま先、骨、内臓までと、余すことなく沖縄料理に使用されています。
豚肉の歴史を遡ると、琉球王朝が作られた14世紀ごろから沖縄では豚肉を宮廷でのおもてなしの料理として使用されており、養豚の発展とともに徐々に一般の家庭にも広まり、18世紀ごろになると、家庭のお祝い事などでも欠かせない食材として親しまれ今に続いているのです。
伝統の製法で作られている島豆腐
豚肉と並び欠かせない食材のもうひとつが豆腐です。沖縄ではチャンプルーに代表されるように豆腐がとてもよく食べられます。豆腐といっても全国的に食べられている木綿豆腐や絹豆腐ではなく、島豆腐とよばれる沖縄ならではの豆腐です。島豆腐は通常の豆腐とは製造工程に少し違いがあり、大豆をふやかしたのち、すりつぶして絞ってから火を入れるという、「生しぼり」という製法が使われています。通常の製法よりも手間も労力も必要ですが、今でも古くからの製法で作られています。
この手間暇かけて作った島豆腐は、通常の豆腐よりも栄養価が高く、タンパク質が1.3倍ほど多く含まれています。沖縄を代表するヘルシー食材として根強い人気を誇っています。
戦後アメリカの影響で根付いた食文化
ここまでは、地元の野菜や魚、豚肉や豆腐を使った料理の背景などご紹介してきましたが、これらは中国を源流とする、琉球王朝時代からの食文化として育まれてきたもので、琉球料理と呼ばれることもあります。もう一方で現在の沖縄の食文化にかかせないのが、戦後アメリカの影響により根付いた料理の数々です。タコライスやランチョンミートなどを使ったスパムおにぎりなども今では沖縄を代表する食文化のひとつとなっています。
米軍基地近くで生まれた料理や、ランチョンミート、コンビーフ、キャンベルスープなどアメリカ発祥の缶詰が持ち込まれ広まったのが由来と言われてています。また、アメリカの影響の食文化として、本土にくらべ、ハンバーガーやステーキなども沖縄ではいち早く食文化として根付きました。A&Wに代表されるように、沖縄では今でも多くのハンバーガーやステーキの専門店があり、独自のファストフードの食文化が広がっているのも特徴です。
その中でもステーキ店の比率は人口あたりに換算すると全国でダントツに多いそうです。最近の調査では、県内のステーキ店は150店舗を超えており、人口10万人あたりに換算すると10店舗を超えています。全国平均では10万人あたり、3.2店舗ということなので、沖縄は3倍以上多いことになります。如何にステーキが好きな県民だと言えるでしょう。
沖縄料理の良さを家庭でも取り入れましょう
独特の風味と豊かな食材が魅力の沖縄料理。中国から渡り琉球王朝時代に育まれた食文化に、戦後のアメリカ統治時代に広まった食文化が融合した、他府県には無い独自の食文化が花開いています。最近では、沖縄を代表する食材も私たちの身近で手に入ることが多くなって来ました。ぜひ、ゴーヤチャンプルーやソーキそばなどをお家で作って、家族みんなで楽しんでみてくださいね。
【参考文献】
※『料理沖縄物語』| 講談社2022年刊
※『沖縄の食文化』| 筑摩書房2022年刊