これからの季節を代表する果物といえば甘酸っぱくてジューシーな蜜柑(みかん)ですね。パパキャリ読者の皆さんもきっと毎年口にしていることと思いますが、その種類や旬がいつかなど意外と詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は日本を代表する果実のひとつみかんにスポットを当て、その代表品種である「温州みかん」に迫ります。
遣唐使が持ち帰った苗が起源の温州みかん
日本で一般的に「蜜柑(みかん)」と呼ばれるものは、温州みかんのことになります。温州は“おんしゅう”ではなく、“うんしゅう”と読まれます。中国の地名がその由来で、浙江省のみかんの中心的産地として知られる場所になります。この地から、遥か1000年以上も前に遣唐使が持ち帰った苗から誕生し、拡がったのでそう名付けられたと言われています。
このみかんは、手のひらに収まる比較的小ぶりのタイプで、皮がやわらかく、手で簡単に剥くことができます。 この温州みかんにはさまざまな種類があり、総称として"温州みかん"と呼ばれています。よく見かけるオレンジ色のものから、早生のものは緑色や、緑に黄色がまだらについたようなものまで存在します。
和歌山県が誇るブランド「有田みかん」
温州みかんの日本での誕生地は、鹿児島県になります。それも中国から持ち帰った苗から突然変異で誕生した日本独自の品種で、元苗の中国にはこの品種のみかんは存在しないのです。鹿児島県に現存する温州みかんの古木と、江戸時代の古文書との照会や、実地調査により日本原産のみかんとして科学的にも証明されています。
今では温州みかんは日本各地で栽培がおこなわれていまが、その最大の産地は、原産地となった鹿児島県を抑え、紀州・和歌山県なのです。 続いて、愛媛県、熊本県と続き、この3県でなんと全国生産量の約50%を占めているのです。以下、佐賀県、長崎県、静岡県など、比較的温暖な地域で栽培されています。
最大の産地・和歌山を代表するブランドが「有田みかん」で、10月上旬から1月が最盛期を迎えます。有田は“ありだ”と呼ばれるので、和歌山に行って有田(ありた)みかんと言ってしまうと、必ず、“ありだ”です!と指摘を受けますから、しっかり覚えておいてくださいね。
収穫時期が4つに分かれる温州みかん
温州みかんは収穫時期によって4つのタイプに分けられます。9月~10月頃に収穫されるものを「極早生(ごくわせ)温州」と呼ばれ、果皮に緑色の部分が多く残っているのが特徴です。 10月下旬~12月頃に収穫されるものを「早生(わせ)温州」、11月下旬~12月下旬に収穫されるものを「中生(なかて)温州」や「普通(ふつう)温州」と言います。そしてシーズン最後、12月下旬~3月頃に収穫・出荷されるものを「晩生(おくて)温州」とし、それぞれ明確に区別され流通しています。
この4品種にはそれぞれの旬があり、甘酸っぱさや、甘味とほどよい酸味、少なめの酸味と甘味、強い甘味などの変化が楽しめます。その時期の温州みかんの旬のを見極めておいしさの食べ比べを楽しんでみましょう。
おいしい温州みかんの選び方と保存方法
おいしい温州みかんの選び方のポイントは、全体的に果皮の色が濃くハリやツヤのあるものがおすすめです。小ぶりのもので、果皮が薄くやわらかいものの方が甘みが強いとされています。すり傷があるのは問題ありませんが、皮が日焼けしてしまっているものは、水分が足りず味が落ちているので注意しましょう。
そしてヘタが小さいものを選んでください。枝から切り取ったヘタの切り口が小さい方が、糖度が高くおいしくなっています。ヘタが大きいということは、太い枝から直接なっていたもので、果実の方に十分な栄養が届いておらず、味の劣ると言われています。みかんの重みは、果汁がたっぷり含まれている証なので、手のひらにのせてみて、しっかりとした重みがあるものを選びましょう。
保存の際の注意点は、冷蔵庫での保存はNGと覚えておいてください。冷蔵庫で保存すると、低温障害を起こし傷んでしまうことがあります。風通しがいい涼しい場所で保管するのがおすすめです。
食べた後は、みかん湯で楽しみましょう
温州みかんをおいしく食べた後は、皮は捨てずに一週間ほど風通しのいい日陰で乾燥させてください。そして乾燥させた皮は布袋やネットに入れて、浴槽に浮かべて自家製みかん湯を楽しんでみてください。みかんの皮を剥くとふわっと香る爽やかな柑橘の香りを感じることがあると思います。あの香りの正体は「リモネン」という精油成分になります。
リモネンにはリラックス効果があるとされ、アロマオイルなどにも使われています。精油成分には毛細血管を広げ、血行を促進する作用もあるため、体を芯から温め、寒さで縮こまった筋肉やからだを開放してくれますよ。これからの季節、おいしい温州みかんを家族で楽しみ、そして温かいみかん湯で身も心もホッコリしてみませんか!
【参考文献】
※『家庭でできるおいしい柑橘づくり12ヵ月』|家の光協会2021年刊
※『ミカン産地の形成と展開-有田ミカンの伝統と革新』|農林統計出版2009年刊