
海外に誇れる日本の文化はたくさんありますが、何と言っても四季があることとその季節に合わせた旬の味覚や行事が根付いていることではないでしょうか。そして春夏秋冬はさらに二十四節気・七十二候と分かれ、細やかな季節の移り変わりを感じる大切な目安になっています。日本ならではのこの素敵な季節感を、ぜひ次世代を担う子どもたちにもパパ・ママから伝えて欲しいとの願いから、この特集をお届けします。今回は【大雪】です。
大雪(12月7日頃~12月21日頃)

大雪(たいせつ)とは、いよいよ雪が本格的に降り積もるところが増え、冬本番の時期を指しています。日本各地に冬将軍と呼ばれる強い寒気が到来し、冷たく肌を刺す風が吹く日々が続きます。雪に対する感情は地域によって大きく異なります。積雪の多い北日本では、災害をもたらす大雪を悪魔にたとえて「白魔」と呼び、警戒を怠らないように過ごします。一方、実害の少ない南日本では恵みの雨の一種でもあるかのうようにとらえ、雪を「瑞花」と呼んだりもします。南北に長い日本列島ならではの雪に対する人の想いの違いが言葉にも表れているのです。
大雪は七十二候では、初候:閉塞成冬(そら さむく ふゆとなる)12月7日~11日、次候:熊蟄穴(くま あなに こもる)12月12日~16日、末候:鱖魚群(さけの うお むらがる)12月17日~21日の3つに分かれます。天地の気が塞がれ冬がおとずれる頃、熊をはじめ様々な生き物が冬ごもりの時期に入り穴にこもる頃、鮭が産卵のため自分が生まれた川を遡上し里帰りする頃という意味になります。
言葉を聞くだけで、今の私たちの暮らしの中でも、しっかりと季節を感じることが出来ますね。日本の文化・伝統の素晴しさといえるでしょう。
旬のもの

この時期を代表する旬のものと言えば、鱈、春菊、大根などがあります。西京味噌漬などでお馴染みの鱈は、冬の魚の代表格とされ焼き物から鍋料理まで幅広く楽しまれています。産卵期を迎えた鱈は、蟹や海老など身近にある物を何でも食べてしまうことから「鱈腹(たらふく)」という言葉ができたといわれています。
春菊は、関西では菊菜とも呼ばれこの時期の鍋物には欠かせない具材として人気があります。地中海沿岸が原産地になりますが、ヨーロッパでは鑑賞に供せられるだけで、食用とされているのは日本をはじめ東アジアの国々だけというのも興味深いところです。
冬野菜の代表格でもある大根は、消化を助け、むくみ解消、便秘改善、免疫力向上など私たちの健康の大きな味方になってくれる食材です。価格も比較的安定しているので、家族の健康促進ために積極的に摂って欲しい旬のものになります。
季節の行事「正月事始め」

12月13日は「正月事始め」で、煤払い、餅つき、松迎えなど一年間の汚れを落とし清めて、新しい年の準備を始める日とされています。昔の民家では家の中で薪を焚いて料理をしたり、暖をとっていたので天井などに煤や埃がたまりました。それを払い清め掃除をしきれいな状態で新年を迎える習わしで、それが今の大掃除へと受け継がれているのです。餅つきは、歳神様へのお供え物、松迎えは門松やしめ縄飾りなどで、歳神様をお迎えする目印の意味があり、新年を無事に迎えるための大切な行事として今の根付いています。
暮らしの中の楽しみ「ふろふき大根」

冬野菜の代表格・大根は生はおろしやサラダなどで食されますが、寒い日には何と言ってもじっくり煮込んだ大根にお好みの味噌タレをつけて食す「ふろふき大根」ではないでしょうか。大根はじっくり煮込むほど甘さと旨味が増してきます。アツアツの大根をフゥ・フゥと息を吹きかけながら楽しむのはこの時期ならではの醍醐味でしょう。作り方もいたってシンプルで手間いらず。ぜひ家族みんなで味わってくださいね。
【参考文献】
※『二十四節気を楽しむ図鑑』|株式会社二見書房2018年刊
※『日本の四季と暦』|株式会社学研パブリッシング2013年刊