豊富な種類のぶどうが市場に出回る時期になりました。小粒な品種から大粒な品種まで、色も黒・赤・白と見た目にも鮮やかで、様々な特徴を持った味が私たちを楽しませてくれます。現在、世界には約10,000種ほどのぶどうが存在すると言われています。今回は、ぶどうにまつわる興味深い話題をピックアップしてお届けします。
3種類に分けられるぶどう
果物としてそのまま食べるぶどうから、ワイン用のぶどうなど、多種多様なぶどうが世界中にあります。古来よりぶどうによるワイン造りがおこなわれてきたことから、品種改良も繰り返され、現在では10,000種ほどが存在しています。世界的には、地域ごとに「ヨーロッパブドウ」や「アメリカブドウ」などと区別することもありますが、日本では主に色によって黒・赤・白の3つに大別されています。ではそれぞれのぶどうの特徴をご紹介していきましょう。
黒系のぶどう(巨峰など)
黒系ぶどうの特徴は、濃い紫、黒っぽい紫色の厚い皮になります。その皮の色の濃さからもわかるように、黒系ぶどうはアントシアニンが豊富。品種によっても異なりますが、基本的には「ぶどうの王様」とも称される巨峰に代表されるような、大粒の実も特徴的ですね。果肉自体は緑色で、香りと味が濃厚です。その巨峰は「石原早生」と「センテニアル」の掛け合わせで誕生したもので、甘み・酸味のバランスが良く高い人気を誇っています。粒で色が濃いほどおいしい巨峰であるといわれ、白っぽく粉がふいているようなものほど新鮮とされています。主な産地は長野県、山梨県になります。
赤系のぶどう(デラウェアなど)
赤系ぶどうは、黒系ぶどうよりも明るい紫色の皮が特徴で、なかには色の濃いものや、緑に近いものもあり、黒系と白系の中間といった感じといえます。粒の大きさは、安芸クイーンのような大粒の品種もあれば、デラウェアのような小粒もあり、品種によって様々です。果実は酸味が少なく、糖度が高いので甘いぶどうが好きな人に好まれています。代表格のデラウェアは、アメリカ原産の自然交雑種のぶどうで、日本では主に、山形県、山梨県で生産されています。小粒の実で甘みが強く食べやすい品種で、種なしぶどうとして知られていますが、もともとは種がある品種でした。 濃い赤紫色の皮で、軸の緑色が鮮やかなものがおいしく新鮮なデラウェアです。
白系のぶどう(シャインマスカットなど)
白系ぶどうは、淡く明るい緑色の皮が特徴で、「青ぶどう」「緑ぶどう」とも呼ばれます。白系ぶどうは白ワイン用として作られているものも多く、芳醇な香りとさわやかな甘さがあります。黒系ぶどうは皮が分厚いものが多いですが、白系ぶどうは皮が薄くやわらかい品種が多いため、比較的どんな品種でも皮ごと食べられるものが多いです。最近ではシャインマスカットが大きな人気を集めています。この品種は「安芸津21号」と「白南」の交配により広島県で誕生しました。2006年に品種登録されたまだまだ新しいもので、育成のしやすさもあり生産が増えてきています。実は大粒で楕円形、酸味の少ない果肉はぎゅっと引き締まっており、豊かな食感が特徴的。親の安芸津21号から「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の上品な香りを引き継いでいます。主な産地は長野県、山形県、岡山県などです。
種なしぶどうはどうやって作るの?
初めて種無しぶどうが誕生したのは昭和34年。植物ホルモンである「ジベレリン」という農薬を開発したことがきっかけでデラウェアという品種が誕生しました。 現在では種類も増えシャインマスカットや、酸味・甘み・渋みのバランスが絶妙の瀬戸ジャイアンツやニューピオーネ、そして巨峰にも種無しがあるのです。種無しぶどうは皮ごと食べられるためとってもお手軽ですし、普通のぶどうに比べて糖度が1~2度高いのも特徴です。
農薬として使われている「ジベレリン」とは成長ホルモンの一種で、種無しぶどうをつくるのには欠かせない薬品です。農薬と言うと化学物質を合成して作り出すイメージがありますが、自然界に生成する菌を発酵してつくられています。いわゆる酵母や麹などと同じ類のものになります。農薬と聞くと気になるのが安全性ですが、結論から言うと、日本での農薬は使用基準が厳しく設けられているため正しく使用していれば体に害を与えることはありません。安心して皮のまま食べれますよ。 また最近スーパーでは外国産の種無しぶどうをよく見かけますが、諸外国ではぶどうは皮のまま食べるのが当たり前となっているため、日本よりも更に農薬の使用量は低く、こちらも安心して楽しめます。
ぶどうの保存方法(小粒な品種)
デラウェアやナイアガラなどの小粒ぶどうは、実が密集して付いています。果汁が多く皮がやわらかい品種が多いため、傷付けないように房のまま保存するのがオススメです。小粒ぶどうの最適保存温度は5〜10度なので、常温保存には向きません。特にデラウェアは実がやわらかいため、冷蔵庫で保存してください。小粒ぶどうは、房ごと保存するようにしてください。特にデラウェアは、実が外れやすく皮がやわらかいので、丁寧に保存しましょう。皮の表面に付く「ブルーム」という白い粉は、病原菌から身を守ったり鮮度を保ったりする役割があります。ぶどうを冷蔵保存する際は、ブルームが落ちないように、洗わないことがポイントです。
傷んでいる実や外れそうな実は取り除き、やわらかいキッチンペーパーやくしゃくしゃにした新聞紙などで包んでから、保存容器やポリ袋に入れて保存しましょう。衝撃に弱いので、ほかの野菜と一緒に保存する場合は容器に入れるようにしてくださいね。
ぶどうの保存方法(大粒な品種)
巨峰やピオーネなどの大粒ぶどうも、あまり日持ちはしません。房のままの場合、できるだけ2〜3日で食べ切りたいです。みずみずしさを楽しみたいなら、手間がかかりますがひと粒ずつカットしましょう。特に巨峰は、軸から実が外れやすいため、ひと粒ずつバラバラにして保存するのがおすすめです。丸ごと保存したい場合や、2~3日以内に食べる場合は、洗わずにキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫に入れるのがオススメです。
家族で旬のぶどうを楽しみましょう
いかかでしたか、ぶどうの四方山話。黒系ぶどうから、赤系ぶどう、白系ぶどうまで、この時期は数多くの種類のぶどうを味わうことができます。ぜひ家族にみんなで様々なぶどうを食べ比べてみて、旬の味覚を楽しんでくださいね。
【参考文献】
※『たべもの起源事典』|株式会社東京堂出版2003年刊
※『からだのための食材大全』|株式会社NHK出版2016年刊