もうすぐクリスマスです♫ジングルベルとともにクリスマスケーキは、日本のイブを飾る大切なアイテムになっていますが、他の国では同じようにケーキを食べているのでしょうか?今回は日本におけるクリスマスケーキの誕生を探りながら、各国の事情などもご紹介。ぜひお子さんに教えてあげましょう!
ケーキは人類の歴史とともにスタート
人類のケーキの歴史はなんと古代まで遡ります。世界最古といわれるケーキは、スイスの新石器時代の村落跡から発見されました。当時は穀物などを練ってパテ状にして平らに固めた甘いパンのようなものでした。古代ギリシア・ローマ時代には主に宗教儀式に用いられ、盛んに作られていたようです。
現代のケーキの原形は中世ヨーロッパで産声を上げました。十字軍の遠征によって砂糖がもたらされ、イタリアではお菓子の専門店が登場。そして、17世紀のフランスにおいてケーキを現在と同じような焼き方で製造するようになったのです。この時期にスポンジケーキやシュークリームなど、いまでもお馴染みのケーキの基が作られるようになったのです。
多種多様な各国のクリスマスケーキ
クリスマスは古代ヨーロッパの冬至を祝うゲルマン民族のユール(祭)が起源でした。それがキリスト教と結びつきクリスマスへと変化していったのです。フランスの代表的なクリスマスケーキ「ブッシュ・ド・ノエル」は、訳すと「クリスマスの薪」。薪を模したフォルムがユールの名残りを感じさせ、起源にちなんだ、もっともクリスマスらしいケーキといえます。
なぜ木の形なのかということについては諸説あるそうですが、クリスマスはキリストの誕生日であるため、その生誕を祝って何日も火を絶やさず暖炉に薪をくべて燃やし続けたことに由来しているという説が有力です。
ここ数年、日本でもパン屋さんで見かけるようになったドイツ生まれの「シュトーレン」。ブランデーのような洋酒に浸したドライフルーツを入れる、甘く長細いパンです。
シュトーレンはドイツ語で「坑道」を意味し、トンネルのような形をしているところからこの名前がついたそう。表面にまぶした粉砂糖が、生まれたばかりのキリストの産着になぞらえたとされています。パンといってもかなり日持ちがするため、ドイツではクリスマス前から当日に向けて少しづつ食べられるのが一般的です。
その他では、イギリスはナッツ、ドライフルーツ、スパイスを入れて焼いた「クリスマスプディング」を食べるのが風習です。大きなプリン型に生地を流して、湯せん焼きにするのが特徴です。
イタリアでは、ミラノの発祥の伝統菓子「パネトーネ」をクリスマスに食べる風習があります。レーズンやオレンジピールなどのドライフルーツを生地に混ぜ込む、甘いソフトなドーム型のパン。クリスマスまでの数週間をかけて、ゆっくり食べる点がドイツのシュトーレンに似ています。
一方、アメリカではクリスマスにケーキを食べるという習慣はないようです。代わりに、りんごやかぼちゃなど旬の果物や野菜のパイを食べることが多いようです。また七面鳥の丸焼きもアメリカのクリスマスを象徴する料理のひとつです。
日本のクリスマスケーキの発祥は?
では、日本のクリスマスケーキの起源を掘り下げていきましょう。当然ですが日本人には、もともとはクリスマスにケーキという習慣は根付いていませんでした。クリスマスケーキが日本で初めて販売されたのは、1910年のこと。お菓子の老舗メーカー、不二家が元祖といわれています。
当時は現在のようにいちごや生クリームをのせたものではなく、ドライフルーツと洋酒を効かせたフルーツケーキに、砂糖衣をかけてアラザンをトッピングしていました。当時は高価で一般市民が購入できるものではなく、特別な日に食べる贅沢品の位置づけでした。
その後、1922(大正11)年に、創業者・藤井林右衛門がアメリカ渡航中に出会った、生クリームといちごをスコーンで挟んだ「ストロベリー・ショートケイク」を、ふわふわのスポンジケーキにアレンジして販売し、それが今のクリスマスケーキの元祖となったのです。やがて不二家の店舗拡大とともに普及し、昭和50年代初頭に広く定着したのです。
クリスマスケーキは和洋折衷のシンボル
こうして日本に定着したクリスマスケーキですが、生クリームの白といちごの赤というシンボリックなカラーもその普及に大きな要因となっているのです。白と赤といえばサンタクロースの衣装、古くからクリスマスを象徴する色がケーキで再現されたのが聖夜を彩るお菓子としてピッタリのイメージでした。加えて、日本では古来から紅白はめでたさを表す色として重宝されていたのも見逃せない点といえるでしょう。
家族で素敵なクリスマスを
日本におけるクリスマスケーキ誕生のお話、いかがでしたか。いよいよ後1週間で聖なる夜がやって来ます。今年はクリスマスケーキを家族みんなで楽しむのはもちろん、ぜひ、こうしたお話もお子さんに教えてあげてくださいね。
【参考文献】
※『食に歴史あり』|産経新聞出版2008年刊
※『たべもの起源辞典』|株式会社東京堂出版2003年刊