「4月4月はあんぱんの日♫あんぱんの歴史に迫る」~子どもと一緒に食を考える #56

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「4月4月はあんぱんの日♫あんぱんの歴史に迫る」~子どもと一緒に食を考える #56

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

日本記念日協会では今月の4日を「あんぱんの日」と認定しています。明治8年(1875年)の同日に、天皇のお花見の茶菓子として提供されたあんぱんを明治天皇がいたくお気に召され、以後、そのあんぱんを作った木村屋は皇室の御用達となり、あんぱんの人気が全国区になったことを記念して登録されています。今回は、「あんぱんの日」に因んで今でも人気の高い日本オリジナルのパンの歴史に迫ります。

日本にパンが伝わったのは室町時代後期?

日本人が創作した和洋折衷のパンの代表格“あんぱん”の歴史を辿るには、まずパン自体の伝来から探っていきましょう。日本にパンが伝わったのは室町時代後期の1550年前後と言われています。種子島に漂着し鉄砲を伝えたポルトガル船や、キリスト教の布教に訪れたフランシスコ・ザビエルら宣教師などによるものと推察されています。ただキリスト教の教えと深い関係があるとされたパンは、鎖国政策が強化された江戸時代になると長崎・出島などの一部でしか継承されなかったようです。本格的なパンの普及は、明治維新を経て文明開化を待たなければなりませんでした。

木村安兵衛が挑んだ日本人にあったパン

今も続くパンの老舗「木村屋総本店銀座本店」の創業者・木村安兵衛は、明治2年(1869年)、パン作りに興味を抱き、長崎の出島に出向きパン作りを学び始めました。やがて東京の新橋駅前に文英堂という洋風雑貨兼パン店を開き日本人好みのパンの開発に没頭しました。しかし、お米や麺類になれていた当時の日本人には、パンは作りにくいモノ、食べにくいモノと敬遠されていたのです。

数多くの失敗を繰り返し、試行錯誤を重ねながら6年の歳月をかけて、ついに日本人に好まれる日本ならではのパンの開発に辿り着きました。その特筆すべきポイントは、従来から日本人が大好きだった酒饅頭や大福に着目した点にあります。それをヒントにパン生地は酒種による発酵を試み、砂糖・卵を加えて菓子の感覚を加え、小豆の餡を包むというあんぱんの原型が誕生したのです。

山岡鉄舟が結んだ皇室との縁

こうして明治7年(1874年)、安兵衛が考案した初代あんぱんが販売されるとたちまち人気を集め、店頭には買い求める行列が途切れないほどの大ヒット商品となりました。幕末から維新にかけて活躍した武人・山岡鉄太郎(鉄舟)も、そのあんぱんの大ファンの一人でした。当時、明治天皇の侍従であった彼は、小石川の旧水戸藩邸でのお花見の茶菓子に、このパンを供することを思いつきました。

鉄舟から話を持ちかけられた安兵衛は、天皇への献上用として、奈良吉野から取り寄せた八重桜の花の塩漬けを埋め込み御前にお出ししたのです。天皇と皇后は、このあんぱんを大層お気に召され、引き続き納めるようにとのお声が掛り、ついには皇室御用達となり、あんぱんの価値がさらに高まっていったのです。

全国に拡がったあんぱん作り

明治20年代に入ると、あんぱんは全国に知れわたり、安兵衛と息子・英三郎が営んでいた木村屋には、その技術を学びたいという希望者が殺到しました。木村屋では、技術を習得し一人前に育ったパン職人に免許証を渡し、のれん分けをするなど技術の伝承にも注力したのです。こうして明治30年代には、日本で生まれた日本人のためのパン“あんぱん”は全国区の人気となり、その地位を確かな物にしていきました。

加えて明治30年(1897年)には、皇室御用達限定の品となっていた八重桜の花の塩漬けを埋め込んだあんぱんも、一般に販売が始まり、あんぱん人気の高まりに拍車がかかることになりました。木村屋総本店銀座本店では、現在も、当時の味を守り続けている「桜あんぱん」が販売されています。機会があれば、ぜひ食べてみてくださいね。

手軽なおやつ“あんぱん”も、その歴史から味わいましょう

おやつに近い感覚でたべれるこのパンは、何時でも手軽に楽しめる味として老若男女問わず、誰もが口にした経験があることでしょう。ちょっと小腹がすいた時、受験勉強の夜食として、慌ただしい朝のひと口など、あんぱんを食べるシーンは数多くあります。でも、今年は安兵衛が開発した初代あんぱんの誕生から150年の節目の年にあたります。せっかくなので、次にあんぱんを食べる時は、その歴史に想いを馳せてぜひ味わってみてくださいね。あんぱんの新しい魅力に気づくかも知れませんよ。

【参考文献】

※『食に歴史あり』|産経新聞出版2008年刊

※『たべもの起源事典』| 株式会社東京堂出版2003年刊

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