『3月1日はデコポンの日♫日本で唯一の基準を持つ果物に迫る』~子どもと一緒に食を考える #33

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『3月1日はデコポンの日♫日本で唯一の基準を持つ果物に迫る』~子どもと一緒に食を考える #33

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

3月1日は「デコポンの日」です。熊本を代表する果物で、平成3年3月1日にはじめて市場に出荷されたことに因んで制定されました。正式な品種名は「不知火(しらぬい)」と呼ばれますが、実はデコポンは日本で唯一「全国統一糖酸品質基準」を持つフルーツなんです。今回は、そのデコポンの生い立ちに迫ります。

一度は見捨てられたフルーツが熊本(不知火)で蘇る

不知火は昭和48年(1973年)、長崎県の園芸試験場・口之津試験地で「清見」と「ポンカン」の掛け合せで誕生しました。当初は「キヨポン」と呼ばれてましたが、玉揃いが悪く、いびつな形だったため生産者に不評で見向きもされなかったとのことです。

そのころ熊本県下の柑橘農家は、オレンジ輸入自由化の影響で特産品の甘夏や八朔などの価格が大暴落し苦境に追い込まれていました。新たな品種を探していた地元の不知火農協はキヨポンも候補として試験栽培に取り組みましたが、いびつな形で酸味も強く、到底売り物になるとは思われず長崎県同様に捨て置かれた存在でした。

ところが奇跡が起こります。当時の試験園の園長が、収穫し放置されていたキヨポンをふとした拍子に食べてみたところ、酸味が抜けとても甘く、驚くほどのおいしさを持っていたました。キヨポンは熟成させることで味が良くなるということが偶然にも判明した瞬間でした。さっそく不知火農協では品種名を「不知火」と登録し、これを農協と柑橘農家が総力を挙げて生産に取り組み、平成3年(1991年)3月1日、東京市場への初出荷となり、全国デビューを果たしたのです。

ニックネームのデコポンが商標登録名に

不知火は、初出荷から市場で大きな人気を得て、甘夏の3~4倍もの高値で取引されるなど上々の滑り出しを見せました。それに刺激を受けた愛媛県や広島県など柑橘類の栽培の盛んな各県も不知火の生産に注力をはじめ、生産・販売競争へと突入していきました。

全国に先駆けて不知火の産地化を進めてきた熊本県では、地元ですでにニックネームになっていた「デコポン」の呼び名を商標登録申請をしたのです。不知火は果実と枝の接合部分が隆起しており、そこを地元では「デコ」と呼んでいました。「デコ」を持った「ポンカン」ということから、自然と「デコポン」の愛称が広まっていました。

平成4年(1992年)に申請が認可されたことに伴い、熊本県産の不知火は県下統一の品質基準に合格した物だけを「デコポン」として出荷するようになりました。そのユニークな名前と、厳しい品質基準を通過した上質なフルーツのおいしさが、市場での圧倒的な地位を確保するようになったのです。

乱立する各県のブランドから統一名称へ

デコポンの大成功を受けて、他県でもオリジナルの銘柄を競って付けるようになりました。愛媛県の「ヒメポン」、広島県の「キヨポン」、鹿児島県の「ラ・ミポリン」、静岡県の「フジポン」など同じ不知火というフルーツで何通りものネーミングが乱立する事態になったのです。

当然、流通及び消費者に対して混乱を招くことになり、各県に対して数多くの苦情が寄せられました。そこで不知火のさらなる発展のためには名称の統一が不可欠との機運が高まり、関係機関で協議が重ねられ、もっとも知名度の高い「デコポン」に統一する方向へと進んでいきました。

その結果、平成9年(1997年)に熊本果実連と日本園芸農業協同組合連合会の間で商標権使用許諾契約が締結され、「デコポン」が統一名称として再び全国的にクローズアップされたのです。

デコポンのおいしさを家族みんなで楽しみましょう

誕生から四半世紀をかけて、「デコポン」という統一名称が付いた不知火ですが、実は不知火のすべてがデコポンと呼ばれる訳ではないのです。最初にお伝えした日本の果物で唯一の「全国統一糖酸品質基準」に合格した物だけに与えられる名称がデコポンで、糖度13度以上、酸度1%以下、という厳しい基準があるのです。

この厳格な基準を通過した物だけが、デコポンの名で、私たちの味覚を楽しませてくれています。柑橘系フルーツならではの高い甘みと佳良な肉質、そして心地良い香りを持ったデコポン。ぜひ家族みんなでそのおいしさを体感してみてくださいね。

【参考文献】

※『デコポンをつくりこなす』|社団法人農山漁村文化協会1999年刊

※『熊本 地理・地名・地図の謎』| 株式会社実業之日本社2015年刊

 

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