魚に雪と書く鱈(タラ)は、文字通り雪がちらつく冬が旬になります。淡白な味わいで低カロリーでヘルシーな魚として、鍋料理やムニエルをはじめ様々な調理方法で楽しまれています。そして、私たちの健康に役立つ栄養素も豊富に持っている食材なんです。今回は、旬を迎えた鱈の魅力に迫ります。
マダラとスケトウダラ、どちらが鱈?
鱈の種類にはマダラとスケトウダラの2つがありますが、一般に鱈と呼ばれているのはマダラになります。マダラは、北の海に生息そており、オホーツク海を吹雪が舞う12月~2月頃が漁の最盛期となります。体長1mにもなる大型の魚で「鱈腹(たらふく)食べる」と例えられるようにお腹が膨らんでいるのが特徴です。脂肪分が少なく淡白な味で、冬の鍋料理には欠かせない魚として人気があります。また鱈の身を使って加工したでんぶやそぼろ、乾物の干ダラや棒ダラなども珍味として楽しまれています。
一方のスケトウダラも北の海の魚で、北洋漁業の主要な魚種となっています。市販されている「たらこ」はマダラではなく、スケトウダラの卵なんです。ただ鮮度の低下が速いため、鮮魚としての利用は少なく、大部分がすり身に加工され、カマボコなどの練製品の原料として使用されています。
鱈の素晴らしい栄養①
では鱈が持つ素晴らしい栄養についてご紹介しましょう。まずはたんぱく質、この成分は血液や筋肉を構成する材料となるだけでなく、体の機能を調節する酵素や抗体などを作る役割も担っています。私たちの生命維持に不可欠な栄養素なので、毎日の食事からの摂取が望まれます。鱈には100gあたり、たんぱく質が17.6g含まれています。
続いてビタミンD、こちらは小腸や腎臓でリンやカルシウムの吸収を促して濃度を正常に保ち、骨の形成を助ける役割を担う栄養素です。油に溶ける脂溶性ビタミンに分類されるため、マリネにしたり、フリッターなど、油と一緒に食べると吸収が高まります。鱈には100gあたり、ビタミンDが1.0μg含まれています。
鱈の素晴らしい栄養②
強い抗酸化作用をもつビタミンEは、血管を健康に保つほか、細胞を酸化しにくくするのにも役立ちます。この成分が不足すると、血行が悪くなったり、紫外線から肌を守る機能が弱くなったりします。日常の食事から適量の摂取を心がけることが必要です。この時期は旬の鱈で、しっかり摂りたいものです。鱈には100gあたり、ビタミンEが0.8mg含まれています。
そして正常な赤血球を作るために必要不可欠なビタミンB12も鱈は豊富に含んでいます。加えてこの成分は、たんぱく質の合成や脂肪酸の代謝なども担っており、日本人の食事摂取基準では、18歳以上の男女で2.4μg/日の推奨量が設定されています。鱈100gを食べることで、一日に必要なビタミンB12の約半分以上を摂ることができるのです。
妊婦さんや赤ちゃんの離乳食にもオススメ
これまで紹介してきた素晴らしい栄養をはじめ、鱈は妊婦さんや赤ちゃんの離乳食にもオススメです。妊婦さんの健康、胎児・赤ちゃんの発育に欠かせないDHAや良質なたんぱく質が豊富に含まれているので積極的に摂り入れて欲しい食材です。ただし、妊娠中は食中毒に特に注意が必要なため、しっかりと加熱して食べるようにしましょう。
離乳食としては生まれてから5~6か月頃(離乳初期)を過ぎたあたりから使用できます。調理のときは骨や皮を取り、しっかりと加熱してやわらかくしましょう。おかゆに混ぜたり、水分を加えたりすると食べやすくなりますよ。
家族で栄養たっぷりの鱈を楽しみましょう
旬を迎えた鱈は、高たんぱく・低カロリーなだけでなく、ご紹介してきた素晴らしい栄養素が豊富です。水銀の濃度が低い鱈は、しっかりと加熱すれば、妊娠中の食事や離乳食にも安心して取り入れられる食材です。健康や発育に欠かせないDHA・たんぱく質の摂取源として積極的に取り入れ、家族でおいしく楽しんでくださいね。
【参考文献】
※『ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典』|株式会社三賢社2022年刊
※『旬のを味わう魚の事典』|株式会社ナツメ社2008年刊