いよいよ食欲の秋到来です。この時期の果物といえば、みずみずしくてさっぱり食べられる「梨」に人気が集まりますね。数多くの種類がありますが、日本の梨(和梨)は赤梨と青梨に二分されています。赤梨は日本の梨生産量第1位を誇る「幸水(こうすい)」をはじめ「豊水(ほうすい)」「新高(にいたか)」などがその代表格で、青梨はなんといっても「二十世紀(にじっせいき)」がダントツの知名度でしょう。今回は、まさに今が食べ頃の「梨」の魅力と「二十世紀」にまつわる誕生秘話についてご紹介します。
2500年以上前から日本に根づく果実
梨の歴史は古く、日本では今から2500年以上前の弥生時代に中国から入ってきたとされています。奈良時代に編纂された「日本書紀」にも栽培の記録が残っています。江戸時代後期には1,000以上の品種名が存在したとの記述も残っています。その後、明治時代に入ると優良な品種が発見され、全国各地で栽培が盛んになり、現在の品数に集約されていったのです。
日本の梨(和梨)は赤梨と青梨に分かれますが、赤梨は表皮が赤みを帯びた黄色で、果肉が柔らかく、酸味が少なく甘みが強いのが特長です。千葉県で多く生産されている「幸水」をはじめ「豊水」「新高」などが有名です。一方の青梨は表皮は薄い黄緑色で、果肉はシャキシャキとした食感で、みずみずしさと程良い酸味が大きな特長です。鳥取県の特産品としても有名な「二十世紀」をはじめ、「かおり」「菊水(きくすい)」などがあります。
赤梨の代表格「幸水」の魅力
「幸水」は、梨の中でもトップクラスの強い甘味と豊かな果汁が最大の魅力です。梨の生産量が日本一の千葉県で、約半数の栽培面積を占める人気品種で、比較的早い時期からに出荷されるので、7月初旬から市場に出回ります。一番多く出回るのは8月頃で、残念ながらこの9月になると「豊水」や「新高」に出番を譲る形になってしまうので、ぜひ来年の7月~8月に旬の「幸水」のおいしさを味わってみてください。
青梨の代表格「二十世紀」の魅力
「二十世紀」は、果肉がシャキシャキとした特有の食感を持ち、ジューシーな果汁と程良い甘さと酸味を兼ね品得た人気品種です。鳥取県でもっとも多く栽培されており、特産品として鳥取の代名詞にもなっています。旬は8月中旬~10月中旬で、まさに今が食べ頃、おいしさも最盛期です。きれいな球体で上質な物は300gくらいの重量感があり、梨の中で、最もみずみずしい品種と言われています。
実はこの「二十世紀」には、偶然に発見されたという驚きの誕生秘話があるのです。
ゴミ捨て場で発見された「二十世紀」の原木、驚きの誕生秘話
明治20年、千葉県の旧八柱村(現松戸市内)の松戸覚之助(まつど かくのすけ)氏が近くに住む知人を訪ねた際、ゴミ捨て場に生えていた小さな木が気になりました。良く見れば梨の木のよう、知人に断りを入れ、自宅の片隅に移植して育て始めました。やがてその梨の木は10年目の明治31年に結実、その果実は真ん丸に近く、薄みどり色で美しく、甘くて多汁で驚くほどのおいしさがありました。
同年、東京の農園主で種苗商でもあった渡瀬寅三郎(わたらせ とろさぶろう)氏がその果実を「二十世紀梨」と命名し、 各地の品評会に出品したのです。たちまち各会で優秀賞を獲得するなどで、大きな評判を呼び、「二十世紀」は急速な普及を見ることになったのです。新世紀に大きく成長する梨になって欲しいとの願いを込めて名付けられたこの果実は、まさに二十世紀を代表する梨に成長したのです。
おいしい「二十世紀」の選び方と食べ方
今が旬、食べ頃の「二十世紀」をおいしく楽しむため、その選び方と保存についてもお伝えしておきましょう。太陽の光をしっかりと浴びた「二十世紀」は甘みが増していき皮の色が濃くなるため、皮の色がより明るく黄緑色が強いタイプを選びましょう。 また、日光を十分に浴びた梨の表面には、そうでない梨より粒が多く表れます。手に取ったときにずっしりと重みがあるもの、表面に傷がないもの、形が左右対称なもの、これらをチェックポイントとして選別すればOKです。
そして、食べる2時間位前に冷蔵庫で少し冷やしましょう。冷やしすぎると甘味を感じられなくなるので要注意です。「二十世紀」は甘みが強めなのがお尻側なので、4等分または8等分のくし形にカットすると甘味が均等に行き渡ります。保存は冷暗所で常温保存で大丈夫ですし、新聞紙でやさしく包んでおくのがベストです。ただし、残暑が厳しく室温が高くなりがちな場合は、冷蔵庫の野菜室で保存するようにしましょう。その際は乾燥しないようにひとつずつラップや新聞紙に包み、チャック付ポリ袋などに入れてくださいね。
家族で秋の味覚「梨」を存分に楽しみましょう
梨の主成分は水分です。たっぷりとした果汁に加え、リンゴ酸とクエン酸のさわやかな酸味もあり、水分補給や夏バテからの回復にも役立ちます。 発見されたのがゴミ捨て場という偶然からスタートした「二十世紀」は、今では青梨を牽引する4番バッターとして、鳥取県をはじめ全国各地で栽培されています。ぜひ家族でそのおいしさを楽しむとともに、機会があれば梨狩りにもチャレンジしてみてくださいね。
【参考文献】
※ 『そだててあそぼう ナシの絵本』| 農村漁村文化協会2006年刊