『初午で楽しむ♫東のいなり寿司、西のお稲荷さん』~子どもと一緒に食を考える #7

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『初午で楽しむ♫東のいなり寿司、西のお稲荷さん』~子どもと一緒に食を考える #7

Terry Naniwa

Terry Naniwa

編集・ライター稼業に従事すること30余年。 子育ては卒業も、新米パパ&ママに先人の教えや 大切な伝統を発信することをライフワークに活動中。 明治、昭和、平成と時をこえて今も息づく暮らしの知恵を 届けます。

今年の初午は2月10日、全国の稲荷神社で豊作・商売繁盛・開運・家内安全などを祈願する祭事が行われます。初午といえば、いなり寿司をイメージする人が多く、筆者も甘辛く煮た油揚げのなかに、すし飯を詰めた逸品は大の好物です。でも、なぜ初午といなり寿司は結びついたのでしょうか。そして東と西では、その形も呼び名も異なっています。今回はそんな、いなり寿司の原点に迫ります。

稲荷神社の遣いの白狐の好物

京都市伏見区の伏見稲荷大社を総本社とする稲荷神社は全国に約4万社もあります。奈良時代初めの和銅4年(711年)の2月の最初の午の日に、穀物の神様が伏見の稲荷山(伊奈利山)に降りたという故事から、祭事が行われるようになったとされています。

古くから「山の神と田の神」という信仰が定着していた日本では、春になると神様が山から里へ降り、田の神となって稲の育ちを守ると信じられていました。秋の収穫を無事に終えると神様は山に戻ると言われており、その同じ時期に姿を見せていたのがキツネだったのです。

やがてキツネは神の遣いと考えられるようになり、白狐(びゃっこ)さんと呼ばれ人々からに親しみを持って受け入れられたのです。その尾がたわわに実った稲穂にも似ていたのも、まさに農耕の神様の遣いと思われたのでしょうか。そしてキツネの大好物が油揚げとされていたことに因み、初午の際に油揚げや、油揚げに稲荷神のおかげでもたらされたお米を詰めたものを奉納したことが、「いなり寿司」の始まりと言われています。

東日本では俵型の「いなり寿司」

では東西の違いを見ていきましょう。甘辛く煮た油揚げにすし飯を詰めるのは同じですが、東日本では俵型が主流になります。これは五穀を司る稲荷神社に奉納する米俵に因んだ形で、なかに詰めるのは具を加えない白いすし飯が大半です。その呼び名も稲荷神社に因んで「いなり寿司」といたってシンプルです。

西日本で三角形の「お稲荷さん」

一方、西日本ではキツネの耳の形や稲荷神社の総本社・伏見稲荷大社のある稲荷山に見立てた三角形が主流です。すし飯にも、にんじん・ごぼう・椎茸・胡麻などの具を入れることが多く見受けられます。そして呼び名も「お稲荷さん」と、いかにも京・伏見の発祥らしいはんなりした表現が好まれています。

「初午いなり」ではいなり寿司を3ついただく

今も初午の日にいなり寿司を楽しむ風習は根強い人気を持っていますが、その食べ方の基本は3つをいただくスタイルになります。いなりの「い」は「命(いのち)」から長寿につながり、「な」は「名(な)を成す」から成功や出世を願い、「り」は「利益(りえき)」から商売繁盛を祈るとの意味があります。おいしいいなり寿司を楽しみながら祈願できるなんて、ステキな「初午いなり」ですね。

2月11日にはおいしい「いなり寿司」を楽しみましょう

この「初午いなり」をこれからの新しい時代にも、しっかりと定着させ発展させたいとの願いから、一般社団法人・全日本いなり寿司協会が毎年2月11日の建国記念の日を、「初午いなりの日」として制定しました。そして2017年には日本記念日協会に認定・登録され、その認知も広まりつつあります。

最近では、季節の具材をふんだんに使った創作いなり寿司をはじめ、多彩ないなり寿司が市場を賑わせています。子どもにとっても親しみやすい味つけのお稲荷さんをチョイスして、家族で「初午いなり」を楽しんでくださいね。

 

【参考文献】

※『くらべる東西』|東京書籍株式会社2016年刊

※『年中行事としきたり』| 株式会社思文閣出版2016年刊

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