今回はフレックスタイムを導入している企業とはどんな職種なのか、そしてその内容をご説明します。加えて実際にフレックスタイムで働いているパパの実例も紹介。まだフレックスタイムを経験していない方はぜひ参考にしてみてください。
フレックスタイムを導入している企業の割合
フレックスタイムという言葉はよく聞くものの、実際に導入しているのはごく一部の企業のみです。厚生労働省が平成30年に行った「就業条件総合調査」によるとフレックスタイム制を導入している企業の割合は全体の5.6%。これを見ると意外と少ないと思うかもしれません。
しかし、企業規模に注視すると従業員数1,000人以上では導入率が24.4%、300~399人以上では10.7%と規模が大きい企業ほどフレックスタイム制の導入率が高いことがわかります。その理由としては、フレックスタイム制を導入する際には部署ごと、職種ごと、人ごとと細かく導入できるためです。逆に100人未満の企業では3.9%にとどまっています。
フレックスタイムを導入できる職種と難しい職種
フレックスタイムはその特性から導入しやすい職種と難しい職種に分かれてしまいます。
フレックスタイムを導入しやすい職種は個人業務が多い
フレックスタイムを導入しやすい職種は個人業務が多く、システムエンジニア・プログラマーなどの情報通信系や、各種のデザイナーなどのクリエイティブ系、そして学術研究などの専門職になります。会議や打ち合わせ以外は基本的に個人での働きで成り立つからです。
決められた勤務時間帯に縛られる事なく柔軟に動ける職種が、現状のフレックスタイムには向いていることが分かります。
導入が難しい職種とは
対して他部署との連携や外部との折衝が必要となる職種やチームワーク業務が求められる職種などは導入がかなり難しいようです。主に医療・福祉関係、教育関係、各種の製造業などが挙げられます。これらの職種ではフレックスタイムではなくシフト制が多く採用されています。
急患に対応する医師や看護師、ホテルや旅館などの宿泊施設に従事する人、飲食業をはじめとする接客サービスに従事する人など対人業務では、フレックスタイム導入には否定的な考えが大半を占めています。
対象者を限定したフレックスタイムとは
ただ一定の条件を満たした従業員のみフレックスタイムを適用している企業もあります。対象者を何らかの条件で限定すれば、上記のような導入が困難とされている職種でもフレックスタイムで働くことが可能となります。
一定の条件は企業や職種によって異なりますが、子どもの年齢や両親の要介護度などが設定条件として多いようです。これらの条件に当てはまる場合はフレックスタイムでの就業が認められますが、期間限定の場合が多く長期間の適用はハードルが高くなってしまのが現状です。
フレックスタイムを導入している企業の実例
それでは実際にフレックスタイム制を導入している企業をいくつかご紹介します。
大手IT企業
フレックスタイムを比較的早期に導入していましたが、その際に設定していた10時~16時のコアタイムを撤廃したスタイル「スーパーフレックスタイム」に切り替えて運用を始めています。約1万人の社員が自身の業務状況などに応じて、始業・終業時間を1日単位で変更することまで可能にし、出勤の自由度が飛躍的に高まりました。その結果、仕事と家庭の両立の実現と業務の効率化のさらなる向上により業績を最大化にすることが狙いです。
大手テーパマーク
接客業の代表ともいえるテーマパークではフレックスタイム導入は困難と思われがちですが、本社などの事務管理部門という、企業の中の一部のみフレックスタイムを導入しています。コアタイムは10時~15時で設定されており、時間外労働もほとんどない勤務形態になっています。テーマパーク内でお客さんと直接関わるキャストにはシフト制が採用されています。
大手通販サイト
ここでもコアタイムの無い「スーパーフレックス」が導入されていますが、全ての社員対象ではなく希望する社員にのみ適用する形で運営しています。合わせて在宅勤務も積極的に奨励しているので、自分の生活スタイルに沿ったフレキシブルな働き方を実現しやすい環境になります。ただスーパーセールなどの繁忙期には、フレックスタイムを選択していても一定時間の拘束勤務が求められる場合があるようです。
フレックスタイムを選択したパパの実例(2件)
では実際にフレックスタイムを選択し働いているパパの実例をご紹介します。
家庭と仕事の両立を実現
エンジニアで年齢は32歳、ママと愛娘(1歳)の3人家族のパパの場合。
フレックスタイムを選択する前は9時30分~18時の勤務で、毎日1時間程度の残業があり、帰宅するのは20時前後に。そのため就寝が早い愛娘とは平日はコミュニケーションが皆無となり、休日でも育児や家事に背を向けていたため、向き合うことがほとんど無い状態でした。ある日、自分を怯えて見つめている愛娘の態度に大きな衝撃を受けたとのこと。ママとも相談した結果、愛娘との会話が何より大切との意見で、会社が導入していたフレックスタイム勤務の取得を申請し認められました。
フレックスタイムでは、朝は8時からの勤務となりましたが17時過ぎには勤務を終えることが可能となり、帰宅は18時頃と2時間も早く戻れるようになりました。愛娘も元気に迎えてくれる時間で、お風呂タイムも一緒に過ごせるようになりました。愛娘とのコミュニケーションが良好になったおかげで、ママもひと安心してくれ、少しギクシャクしていた夫婦関係も落ち着いたとのこと。家庭と仕事の両立がフレックスタイムを選択したおかげで実現できたと喜びの声が聴けました。
ママの不満解消と頼られるパパに
Webデザイナーで年齢は30歳、ママと愛娘(3歳)、愛息(生後6ヶ月)の4人家族のパパの場合。
フレックスタイムを選択する前は育児も家事もママに任せきりの状態で、ママの不満は爆発寸前。愛息が誕生したのをきっかけに、会社が導入を始めたフレックスタイムを何気なく選択し、早めの帰宅が可能になりました。その時に目に飛び込んで来たのは四六時中、育児・家事に追われているママの大変な姿にショックを受けたとのこと。今まで、すべてをママに押し付けていたことを反省するも、何をどうサポートすれば良いかも分からない自分自身にも落ち込み、ママに謝るとともに相談しました。
一歩づつ、パパができる事からサポートして欲しいとの意見で、まずは愛娘の保育園へのお迎えを担当するよことに。翌日から欠かさず迎えに行くことで、帰宅してからも愛娘の相手を務めることも増え、ママの負担がしだいに減っていきママ自身の不満も和らいでいきました。今では夫婦のコミュニケーションも円満で、パパとして頼られている実感がありますと充実した様子でした。
家族の絆を深めるためにフレックスタイムを選択
フレックスタイムは始業・終業の時間が自由に決められので、ママと子どもの生活スタイルに合わせることが可能になります。そうすることで家族との時間とコミュニケーションが増えていくので、その絆もより深く温かいものになっていくはずです。その上、おうちの中でのママの負担も減っていくので夫婦の関係も良好になるでしょう。1日の中で家族が集まる時間は意外と少ないものですが、その時があると無いとではやがて大きな違いが生じて来ます。
大切な家族とのより絆を深めるためにフレックスタイムで働くということを、これからのパパは選択肢のひとつとして頭に入れておきましょう。