世界でもっとも古い果物のひとつとされる「いちじく」。エジプトのピラミッドの壁画にも描かれていたり、ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画には禁断の果実として登場します。神話の世界では、アダムとイブが裸体を隠すために手に取ったのが、いちじくの葉とされています。梅雨時から晩秋まで売場で見かけるいちじくですが、その旬はいつなのでしょうか。今回はそのいちじくの旬とおいしさについてお伝えします。
いちじくの旬は夏?秋?
いちじくは実の内部に花をつけ、外側から花が見えないことから「無花果」という漢字が当てられたとのことですが、その旬はいつになるのでしょうか。6月~11月頃までほぼ半年間近く売場で見かけることができますが、それはたくさんの品種が次々に出荷されているからなのです。各品種によって旬の時期が異なるので、大きく分けると夏と秋の2回になります。
冬を越して成長し翌夏に熟すタイプを「夏果」、春に実をつけて秋に熟すタイプが「秋果」と呼ばれ、今は「秋果」が旬真っ盛りの時期になるのです。夏のいちじくは、果実が大きな品種が多くさっぱりとした甘味があり、冬を越してじっくり時間をかけて育つため、深い味わいがあります。ただ、収穫期に雨や台風が多いため、流通量が少なく、これまで食べる機会がなかった方も多いかもしれません。
秋のいちじくは今が旬
秋のいちじくは、8月下旬~10月下旬ごろに旬を迎えるので、まさに今が最盛期です。春から伸びる新梢に実を付けて、枝の下部から順番に熟していきます。大きさは夏果に比べると小ぶりですが、濃厚な甘味が特徴です。代表的な品種の「蓬莱柿(ほうらいし)」は、早生日本種とも呼ばれ、しっとりした上品な甘さでほのかな酸味も感じられます。ただ先が裂けやすく、あまり日持ちがしないので手に入れたら早めに食べるようにしましょう。
おいしいいちじくの見分け方
おいしいいちじくの選び方のポイントは、ふっくらと大きく皮に張りと弾力があり傷のないものを選ぶことです。全体的に色付いて赤みがあるものがおすすめです。いちじくは、おしりの先の部分が開いてきたら食べごろで、果実の中の紅い花が見えるくらいがベストのタイミングです。日持ちはしないので、早めに食べましょう。一方、裂け目が大きくなり割れているのは残念ながら熟しすぎになります。実がやわらかく崩れそうな見た目のものは選ばないようにしてください。
香りの面からは。いちじくは熟すと甘い香りが漂うので、程度な香りのものが食べごろです。ただ香りが濃厚でも、果肉がやわらか過ぎるのは、熟しすぎの可能性が高く、表面がぶよぶよになっているものは、避けたほうが賢明です。
健康に役立ついちじくの栄養
いちじくには、水溶性食物繊維の一種であるペクチンが含まれています。ペクチンは水分を保持する性質があることから、小腸において栄養素の消化吸収スピードを遅らせるのに役立ちます。そして、いちじくの食物繊維の中の不溶性食物繊維は便のカサを増やして便通を促す作用があるので、お通じを気にするママにおすすめです。
カリウムは、細胞内液の浸透圧や体液のpHバランスが一定になるよう、調整するはたらきがあるミネラルです。いちじくはこのカリウムを豊富に含んでいるので、塩分の摂り過ぎを調整するのに役立ちます。塩辛い料理やお菓子を食べたら積極的に摂るようにしましょう。
骨の形成に欠かせない栄養素であるカルシウムも、いちじくはたっぷり含んでいます。果実類のなかでもトップクラスの含有量があります。カルシウムが不足すると、骨が十分に成長しないおそれがあるので、育ち盛りのお子さんには積極的に食べさせたいですね。
鉄分は、貧血対策に重要な栄養素です。血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となり、全身に酸素を運ぶはたらきがあります。こちらもいちじくは高い鉄含有量があるので、貧血に悩まされている女性や妊娠中のママにぜひ食べて欲しい果実になります。
家族みんなで旬のいちじくを楽しんで健康に
いかがでしたか。おいしさだけでなく豊富な栄養をたっぷり兼ね備えたいちじくは、まさに家族みんなの健康フルーツといえますね。今が旬真っ盛りのいちじくを家族でおいしく楽しんで、健康促進に役立ててくださいね。
【参考文献】
※ 『よくわかる栽培12月 イチジク』| NHK出版2013年刊