これからの季節、夏バテが心配になりますね。「食欲がわかない」、「身体が何となく怠い」などの症状の時に役立つ食材の代表が「梅干し」とされています。酸味と塩味のイメージが強い梅干しですが、古来より健康食品としても重宝されてきました。梅干し徹底研究の後篇は、梅干しが持つ素敵な栄養に迫ります。
夏バテによる食欲不振にはクエン酸
夏バテの代表的な症状とされる食食不振。暑い屋外と冷房がきいた屋内を行き来すると、温度差によって自律神経のバランスが崩れ、食欲がわかなくなります。食欲不振は栄養不足を引き起こし、疲労感やだるさが増す原因になるため注意が必要です。
その対策に有効なのが梅干しに含まれる酸味成分のひとつであるクエン酸です。クエン酸がもつ酸味が唾液・胃液の分泌を促し、食欲増進を促してくれます。さらに腸内の善玉菌を優勢な状態にすることに役立つため、胃腸の機能を高めるはたらきもあります。さらにミネラルの吸収を高める効果や新陳代謝を活発にする助けにもなるなどの点が、夏バテ対策に梅干しが重宝される所以なのです。
機能性成分が豊富な梅干し
梅干しにはクエン酸以外に、ポリフェノールやミネラル、カリウムなどの機能性成分が豊富に含まれています。抗酸化作用を持つポリフェノールは細胞の老化を防ぎアンチエイジングに役立ちます。ミネラルは骨や歯の材料になるとともに、体液のバランスも整えるはたらきがあり、私たちの身体になくてはならない成分とされています。
カリウムはナトリウムと共に細胞の浸透圧を維持している栄養素です。また、腎臓でのナトリウム再吸収を抑制し、尿中への排出を促進します。そのほか、心臓や筋肉機能の調節などさまざまな作用があり、こうした成分を豊富に含んでいる梅干しだからこそ古くから健康食品として重宝されて来ているのです。
梅干しは塩分に注意して食べましょう
豊富な栄養を持つ梅干しですが、塩漬けタイプ1個(10g)には、1.8gの食塩相当量が含まれています。厚生労働省が定めている日本人の食事摂取基準では、一日当たりの食塩摂取量目標量は男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。そこから考えると、梅干し1個で、一日の約1/4の食塩量を満たしてしまうことになります。
血圧を気にする方や食事に塩分制限がある方は、食べる量を調整したり、減塩タイプの梅干しを選ぶなど工夫してみましょう。そして、一度に沢山食べるのではなく、小まめに食事に摂り入れるようにしてください。つぶしたり、ペースト状にたたいてほかの食材に和えたりすると、調味料代わりに使用でき、料理に加えることで、各食材に含まれる栄養成分の吸収率を高める作用もあります。
例えば、海苔でまいたおにぎりと一緒に梅干しを食べれば、梅干しに含まれるクエン酸のはたらきで、海苔が持つカルシウム吸収率が高まり効果的ですよ。
家族の健康のために梅干しを有効活用しましょう
古来から健康食品として重宝されて来た梅干しが持つ豊富な栄養、いかがでしたか。塩分に注意して食べれば、私たちの身体にたくさんの恩恵をもたらしてくれます。これからの厳しい季節を迎えるので、ぜひ様々なお料理に梅干しを活用して、家族の健康に役立ててくださいね。
【参考文献】
※『たべもの起源事典』|東京堂出版2003年刊
※『「旬」の日本文化』|KADOKAWA2009年刊