家庭野菜の御三家といえば、玉ねぎ、じゃがいも、にんじんが挙げられます。和食はもちろん、洋食から中華までどんな料理にもベースとして使うことの多い野菜で価格もお手頃で、最も身近な野菜たちと言えるでしょう。その中でもにんじんは、鮮やかな色合いが料理自体の引き立てになるので重宝されています。今回はにんじんが持つ素晴らしい栄養とおいしさについて迫ります。
にんじんの祖は中央アジア
にんじんの原産地は中央アジアのアフガニスタンでセリ科に属する植物になります。元々は薬用として栽培されていましたが、やがて中国を中心にした東エリアと欧州を中心にした西エリアに分かれて伝わっていきました。中国を経て日本に伝わったタイプは東洋にんじんと呼ばれ、現在では関西のお節料理で重宝されている「金時にんじん」が唯一残った品種として流通しています。一方、欧州を経て江戸時代に伝わったのが西洋にんじんで、明治以降に急速に普及しました。今日の食卓に並ぶのは、このオレンジ色で円錐型の西洋にんじんが大半を占めています。
にんじんの栄養は緑黄色野菜の王様
にんじんの栄養の代名詞とも言われる「βーカロテン」。この栄養素は南瓜やほうれん草などにも含まれていますが、100g中に約7mgというにんじんの含有量は群を抜いており、そのことから緑黄色野菜の王様の異名も持っているのです。ちなみに「カロテン」はにんじんの英語表記である“carrot”が語源となっています。「βーカロテン」の機能性としては、喉や鼻の粘膜を丈夫にし細菌感染を防ぐ効果をアップさせたり、血圧低下作用や抗酸化作用も有することが証明されています。
脂溶性の「βーカロテン」は加熱調理がおすすめ
「βーカロテン」は油と調理すると体内への吸収が高まる脂溶性が特徴です。加えて、にんじんを生で食べた時と加熱して食べた時の吸収率も加熱時の方が、より高まるという研究結果が報告されています。お子さんの大好物のハンバーグに添える野菜として加熱したにんじんを用いるのは、まさに理にかなったメニューと言えます。にんじんは生食より加熱して食べるのがお薦めと、パパ・ママはしっかり覚えておきましょう。
金時にんじんも魅力一杯の野菜です
金時にんじんは、中国より伝わった東洋の品種のうち唯一残った品種です。西洋にんじんよりも前から西日本で栽培され食べられていました。音の部分が30センチほどで鮮やかな朱色をしており、西洋にんじんよりも肉質が柔らかく甘みが強く、細い円錐型をしているのが特徴です。
西洋にんじんに比べ「リコピン」を多く含んでおり、活性酸素の働きを抑制したり除去する効能があります。大阪で育った筆者も正月には、この金時にんじんが入った雑煮を子どもの頃から楽しんでいました。寒い冬場の正月に健康野菜を使った雑煮を食べるという先人からの食文化は、ホントに日本ならではの財産だと感じますね。
家族でにんじんをおいしく食べて健康に
にんじんには先に紹介した「βーカロテン」以外にも、「オロト酸」というビタミン様物質を含んでいます。この成分は、葉酸やビタミンB12の代謝を助ける働きがあります。とくにビタミンB12は貧血を防ぐ働きが期待できるので、ママをはじめ女性には嬉しい栄養素です。加えて、肝障害の回復を早める効果もあるといわれていますので、お酒好きのパパにも最適です。このように嬉しい営巣素をたっぷり含んだにんじんを家族みんなでおいしく食べて健康な毎日を過ごしてくださいね。
【参考文献】
※『機能性野菜の教科書』|株式会社誠文堂新光莉社2020年刊
※『からだのための食材大全』| 株式会社NHK出版2018年刊