味噌汁の具材の代表格とされる「わかめ」ですが、みなさんはこの海藻の旬をご存知ですか。 北海道から九州まで日本では広範囲に分布しているわかめは、3月から5月にかけて成熟期に入り収穫シーズンとなるため、まさに今が最盛期なんです。そこで今回は、古くから私たちの食を支えて来た貴重な海の恵みの魅力に迫ります。
古代から重宝されていた海の恵み・わかめ
わかめを含めた海藻類は、古代から日本人の生活には欠かせない食材でした。まだ塩を作る技術がなかった時代では、塩分補給の役割も担っていたと考えられています。そして、わかめが文献に登場するのが日本最古の法律である大宝律令(701年)で、当時の租税のひとつに「にぎめ=わかめ」が記載されています。朝廷をはじめとする支配層への貢納品としても重宝されていたのです。
また租税として納められていたわかめの余剰分は、食材として市井の人々にも売りに出されていたようで、佃煮やおひたしなどの料理で庶民の食卓にも並んでいました。奈良・飛鳥の昔から、わかめは日本人の生活に深く浸透していたのがわかります。
これぞ海の恵み♫豊富なわかめの栄養素
古くから日本人の食を支えて来たわかめは、その豊富な栄養素で私たちの健康促進にもなくてはならない食材でした。ここでは海の恵みとも称されるわかめの代表的な栄養素を4つをご紹介しましょう。
◇食物繊維
わかめのぬめり成分である「アルギン酸」は、水溶性食物繊維の一種です。乾燥したわかめでは、その重量の約40%を食物繊維が占めるほど豊富です。アルギン酸には、整腸作用や、コレステロールを低くするはたらきがあります。また、ナトリウムを排出する作用があることから、血圧を下げるのに役立つといわれています。
◇ヨウ素
わかめをはじめとする海藻類には、甲状腺ホルモンの合成に必要な「ヨウ素」が多く含まれています。甲状腺ホルモンは代謝にかかわるほか、胎児・乳児の正常な発育に大きな影響を与えるため、とくに妊娠中・授乳中のママにとっては必要不可欠になります。。わかめしっかりを摂ってヨウ素の不足を防ぐことが、子どもの健やかな成長につながるのです。
◇ミネラル
海の中で育つわかめには、ヨウ素のほかにも、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。みなさんご存知のようにカルシウムは、骨や歯の材料となる大切な栄養素です。加えて、マグネシウムも骨や歯に含まれており、骨の健康維持に役立つ成分なのです。わかめの豊富なミネラルは子どもの成長から、パパ・ママの健康促進にも役立つことを覚えておきましょう。
◇ビタミン
わかめは別名「海の野菜」とも呼ばれますが、その謂れはビタミンも豊富に含んでいるからなんです。目の健康維持に関わる「ビタミンA」、骨の形成を促す「ビタミンK」、エネルギー代謝をサポートする「ビタミンB1」や「ビタミンB2」などが、わかめに多く含まれています。わかめの味噌汁こそ、日本を代表する健康食と称されるのも、この豊富なビタミン含有が由縁になっています。
天然ものは貴重品、大半は養殖わかめ
日本全体に広く分布しているわかめですが、代表的な主な2大産地は岩手県と宮城県をまたぐ「三陸わかめ」と徳島県の「鳴門わかめ」です。しかし、両産地に限らず、現在、流通しているわかめのほとんどが養殖されたものなんです。自然に成長する天然物は少なく、大変貴重な資源とされており流通には出回らないのです。
わかめを含めた海藻類の多くは秋に芽生え、冬に成長をします。秋から春まで、大潮でも日中はそこまで潮がひかないため、冬の間は日光に直接当たらずに成長ができ春の収穫時に最盛期を迎えます。まさに、今がわかめの旬になるのです。
主流の養殖の場合、めかぶから出る胞子を採取して麻紐に種がつくように採苗を行い、秋頃にわかめの本仕込みへ。小さいわかめの葉が出てきた麻紐は、一直線になるように海に設置した養殖用のロープにぐるぐると巻きつけて、海面より上に出ないように土俵などをつけて少しだけ沈めます。乾燥に弱いため、あまり海面スレスレだと波の動きによって日があたり乾燥して芽が成長しなくなるのです。海で成長しているときのわかめは、実は茶褐色のような色をしていますので、食卓に並ぶ際の深い緑とは大きくことなるのも興味深いところです。
家族で海の恵みを楽しみましょう
いかがでしたか、海の恵み・わかめのお話。お家で茶褐色の生わかめが手に入ったら、ぜひ家族みんなで、お鍋でわかめしゃぶしゃぶを召しがってみてください。わかめは湯通しすると、一瞬で茶色からきれいな緑色に変わるのです。お子さんと一緒にその光景を楽しみながら、海藻の魅力を伝えてあげてくださいね。
【参考文献】
※『海藻の食文化』|株式会社成山堂書店2003年刊
※『わかめ入門』| 株式会社日本食糧新聞社2015年刊