真っ赤なトマトといえば夏野菜と思っている人が多いようですが、実は旬は夏でないとご存じでしたか。最近では、一年中を通していつでも手に入るため、いつが旬なのかもわからない状況ですが、ホントにおいしいのはまさに今、この初夏の時期なんです。そこで今回はおいしく実ったトマトについてスポットを当て、豊富な栄養素とその摂取に最適なメニューをご紹介します。
夏野菜のイメージがあるトマト…でも旬は今!
トマトは、実は高温多湿に弱く、冷涼で強い日差しを好む野菜なので、この点から見れば夏の野菜とは呼べません。南米アンデスの山岳地帯が原産地になるトマトの性質からすると、春から初夏、秋から初冬が一番おいしい時期になるのです。 トマトの旬が夏とされたのは、日本でトマトの栽培が始まった当時は農具の発達や温室などの設備が不十分だったため、「春に種まきしたものは、夏に実がなる」という構図から「トマトの旬=夏」となったようです。
今では全国各地で作られているトマトですが、最もたくさん作っているのは北海道、熊本、愛知、茨城県あたりです。農業の効率化が進み、農機具や温室栽培などの設備も充実した結果、各地でさまざまな品種のトマトが栽培され、その成長に適した季節に収穫されるようになっています。品種の改良やハウス栽培の技術が進み、一年中楽しめるトマトですが、露地栽培で自然の気候の中、直射日光を浴びて育ったトマトにはやはり正確な「旬」があり、それがこの初夏、まさに今なのです。
トマトの豊富な栄養に注目
「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるほど栄養価の高い野菜とされているトマトで、その代表格になるのがリコピンです。リコピンとは、トマトの赤い色素のことで、老化や免疫力低下を引き起こす活性酸素を除去するはたらきがあります。抗酸化作用が強いことで知られているビタミンEのさらに上をいく成分で、花粉症やハウスダストアレルギーを軽減する抗アレルギー作用にも注目が集まっています。
次はβカロテンです。βカロテンは体内でビタミンAに変換され、目や皮膚の粘膜の健康維持に役立ちます。また、抗酸化作用もあり、老化の原因となる活性酸素の発生を抑えてくれます。βカロテンは季節によって含有量が変わり、トマトに含まれる量が多くなるのは、まさに今の時期なんです。最小となる11月頃と比較すると、約2倍の差があることが明らかになっています。
美容に役立つ栄養素として知られるビタミンCもトマトはしっかり含んでいます。ビタミンCの主な作用は、身体の細胞同士をつなぐたんぱく質であるコラーゲンを生成し、健康な皮膚や粘膜を保ってくれます。また、抗酸化作用もあるので、老化対策にも役立ちますよ。
リコピン同様に抗酸化作用が期待できるビタミンEもトマトは豊富に持っています。ビタミンEは細胞内における過酸化脂質の生成を抑えるはたらきがあります。過酸化脂質が生成されると、血管が硬くなったり、皮膚の色素沈着やシワの原因となるおそれがあるので、血管や皮膚の健康を保つうえで重要な栄養素になります。
最後にもうひとつ、ミネラルの一種であるカリウムもトマトに含まれている大切な栄養素です。カリウムの主な作用は、ナトリウムとともに細胞の浸透圧を維持しながら、そのナトリウム(塩分)の吸収を抑え、排泄を促す作用があります。これが塩分の摂り過ぎが気になるときにトマトといわれる由縁なのです。
トマトとミニトマトの栄養価の違いは?
最近はフルーツトマトに代表されるようにミニトマトに人気が集まっています。では普通のトマトとミニトマトの栄養価に違いがあるのかどうか、β-カロテンやビタミンCの含有量を100gあたりで比較してみましょう。
・βカロテン
トマト……540μg
ミニトマト……960μg
・ビタミンC
トマト……15mg
ミニトマト……32mg
いずれも、ミニトマトのほうが含有量が多いのです。ミニトマトはトマトより水分が少ないため、栄養が凝縮されているんですね。トマトの栄養を効率よく摂りたいときは、ミニトマトを選ぶのがおすすめです。
トマトの栄養素を効率良く吸収できる冷製パスタ
これまで紹介してきたトマトの素敵な栄養素を無駄なく摂れるおすすめメニューは、何と言っても「冷製パスタ」です。水に溶けやすいビタミンCやカリウムを無駄にしないためには、トマトは生のまま食べるのがおすすめです。加えてβカロテンやビタミンE、リコピンは油に溶けやすい性質があるのでオリーブオイルと組み合わせることで吸収率がアップします。これを兼ね備えた食べ方こそ「トマトの冷製パスタ」なんですね。
露地栽培で自然の気候の中、直射日光を浴びて育ったこの時期のトマトはまさに旬。家族みんなでトマトをおいしく楽しんで元気に過ごしてくださいね。
【参考文献】
※『トマトをめぐる知の探検』|一般社団法人・東京農業大学出版会2017年刊
※『トマトの歴史』| 株式会社原書房2019年刊