ファミレスなどの外食からお家ごはんでもよく食べられているスパゲッティの「ナポリタン」。実はまもなく訪れる4月29日(昭和の日)は、「ナポリタンの日」でもあるのです。ケチャップの代表メーカーであるカゴメ株式会社がナポリタンを盛り上げるために、昭和生まれのメニューに因みこの日に制定したのです。今回は、ナポリタンがどのようにして誕生したのか、その歴史に迫ります。
発祥は横浜「ホテルニューグランド」のカフェから
横浜にあるホテルニューグランドは、1927年開業の歴史あるホテルです。関東大震災後、大きなダメージを受けた横浜復興のため、主に外国人向けのホテルとして造られました。開業当時は、パリの3つ星レストランからシェフを招聘、その人がスイス人シェフのサリー・ワイル氏で、初代総料理長を務めました。
料理の技術や味はもちろんのこと、アラカルトのシステムや調理人の衛生概念を根付かせ、日本に西洋料理を広めた人物と言われています。「シーフードドリア」を生み出したのも、ワイル氏と言われています。そんなサリー・ワイル氏の弟子が、二代目総料理長の入江茂忠シェフ。第二次世界大戦後、ホテルはGHQに接収され高級将校の宿舎として利用されており、その際に軍用食として大量にパスタとケチャップが持ち込まれました。
将校たちがパスタにケチャップをかけて食べていることを知った入江シェフが、「このパスタをホテルのメニューとしてふさわしい料理に出来ないか」と考案したものが、スパゲッティ・ ナポリタンの始まりなのです。
ホテルの味は生のトマトから
今ではナポリタンといえばケチャップを使うのが一般的ですが、入江シェフが考案したのは生のトマトやトマトペーストを使ったものでした。ケチャップは完成された調味料なので、それだけで味が決まってしまうので、手間暇かけて作り上げるホテルらしいひと皿に、そして栄養価の高いメニューにするためでした。
今でもホテルニューグランドでは、当時のレシピを忠実に守り続けています。機会があればぜひ発祥の味を体験してみてくださいね。因みに「ナポリタン」という名は、戦前からフランス料理のメインに添えられていた「スパゲッチーナポリテイン」という料理にヒントを得た説が有力です。
トマトケチャップの普及がナポリタンをメジャーに
こうして誕生したナポリタンが全国に広まったのは、トマトケチャップの普及が最大の要因でした。ホテルのナポリタンソースは、手間暇かけて作るレシピのためお家で再現することは困難でした。それがケチャップが家庭の新たな調味料として脚光を浴びるようになると、ナポリタンがお家でも手軽に作れるとなり、身近な料理として根付いていったのです。
ケチャップ「ナポリタン」を広めたセンターグリル
ケチャップで作るナポリタンが身近な人気メニューとして定着するのに大きな役割を果たしたのが横浜・野毛にある洋食店「センターグリル」です。昭和21年の創業以来、「安くて栄養のある美味しいものを、沢山の人に気軽に食べてもらおう」をモットーに現在まで変わらぬ味を提供し続けているお店です。太麺スパゲッティをトマトケチャップで作るナポリタンが人気となり、そのレシピが広まり全国の洋食店や喫茶店、そしてお家でも作られるようになったのです。
家族みんなでナポリタンを楽しみましょう
このようにトマトケチャップとセンターグリルが考案したレシピが、ナポリタンを昭和を代表する洋食メニューへと育ててくれました。そして令和の今も、レストランからお家まで、ナポリタンは子どもから大人まで親しみのあるメニューとして人気を誇っています。ぜひ家族みんなでナポリタンを楽しむ際は、この誕生のお話をお子さんにも聞かせてあげてくださいね。
【参考文献】
※『ニッポン定番メニュー事始め』|彩流社2013年刊
※『たべもの起源事典』| 株式会社東京堂出版2003年刊